平成二十五年度 入学式式辞

 本校正門横の桜は、今日の日のために、先日の春の嵐にも耐えてくれました。
 本日ここに、大阪府立高石高等学校 第三十七回入学式を挙行いたしましたところ、公私ご多用にも関わりませず、大阪府教育委員会ご代表様、高石市市長様、後援会会長様、PTA会長様をはじめ、PTA役員の皆様のご臨席をいただき、高い所からではありますが、心よりお礼申し上げます。また、この場をお借りいたしまして、平素より本校の教育に深いご理解とご支援をいただいておりますことに、重ねてお礼申し上げます。
 ただいま入学を許可いたしました、新入生の皆さん、入学おめでとうございます。合格発表の日の感動と気持ちを持ち続け、これから有意義な高校生活を送って欲しいと思います。
 
さて、本校は勉学、部活動、行事の三つの分野すべてに情熱を持って取組み、しかる後に自分の希望する進路を切り拓く、たくましく心爽やかな生徒の育成をめざしています。
 ここには二つのことが含まれています。まず、「学校生活の三分野に情熱を持って取り組む」その意義です。皆さんの可能性は無限の液体です。そして皆さんの能力はそれをどれだけ受けとめるかによって変わります。受けとめる器の大きさは、皆さんの成長によって変化していきます。皆さんの可能性は器の大きさにかかわらず、どんなに大きくても、またどんなに小さくても、それなりに器を満杯にします。では、どうすれば器を大きくすることができるのでしょうか。私は背伸びをすることだと考えています。勉学、部活動、行事のそれぞれに、精一杯背伸びして取り組めば、不思議なことに、次のときには、前のところまでは、思いのほか自然に到達できることに気が付くでしょう。つまり、皆さんの器は精一杯取り組めば取り組むほど、大きくなっていくのです。
 二つ目は「しかる後に自分の希望する進路を切り拓く」です。就職難の時代ですから、高校卒業後すぐに就職するにしても、また大学や専門学校に進むにしても、「こんな職業につきたい」だけではなく、「何の仕事にどんな形で取り組むか」と具体的に答えることが求められます。今すぐ完全な答えをする必要はありません。高校三年間をかけて、たとえば「大学卒業後、建設会社で住みやすい社会を作る仕事がしたい」とか「看護師になって病気の子供の気持ちを楽にさせたい」などのように、できるだけ具体的に答えられるようになってほしいと思います。これが希望進路を切り拓くという意味です。
 器を大きくし、夢を具体化するのは皆さん自身です。「あなたの思いをあとおし、たかいし」高石高校は皆さんが自主的に取り組めるようバックアップしていきたいと思います。
 さて、最後になりましたが、本日の入学式にご列席をいただきました保護者の皆様方、心からお祝いを申しあげます。時代小説家の宇江佐真理さんは次のように書かれています。
 「江戸時代、日本人は世界で一番子供をかわいがると言われた民族だった。子供の遊びに一緒になって付き合った。祖父母も孫の養育には一役買っていた。(途中省略)命の尊さを語る時、両親よりも祖父母の言葉が温かく聞こえる。また、近所の人々の声掛けも効果がある。両親のみならず、誰からもかわいがられていると自覚した時、子供は自然によい方向に進むと思うのだが、それは甘い考えだろうか。」
 私は宇江佐真理さんが書かれたように、可愛がることとは、甘やかすことではなく、かかわることであり、大人たちが声をかける事から始まるのだと思います。私たち教職員もできるだけ、生徒の皆さんのいいところを認めて声をかけていきたいと思っています。保護者の皆様方におかれましても、義務教育とは異なる、高等学校の立場を十分にご理解いただきますと共に、学校が意欲的・積極的にお子様方の教育に専念できますよう、良き理解者として、物心両面にわたってご支援・ご協力をいただきますよう特にお願いを申しあげ、式辞の結びといたします。
     平成二十五年四月八日   大阪府立高石高等学校 校長  渡邊 和也