初対面

  両手にいっぱいの荷物を持ってバスに乗ってこられた。後部の座席への通路に荷物を置いて大きく息をつかれた。後部の座席に座っていらっしゃった方が、その二つの荷物を通路から持ちあげて左斜め後ろの方に手渡し、空いている座席へと誘導された。荷物を受け取った左斜め後ろの女性は自分の膝の上にその荷物を置き、通路の段差を上ってきたご高齢の方に二人掛けの椅子の自分の横に座るよう促した。驚くべきことにみんな今日初めて会った人たちであったようだ。

  前のほうでは優先座席の方が乗り込んできた人に席を譲っていた。「私は次の、次のバス停で降りるのでどうぞ。」と声をかけた。結果的には席を譲られた方のほうが先にバスを降車されたので、声をかけた女性は元の座席に座られた。

  わずか15分のバスの乗車中に、初めて出会ったであろう人たちの言葉少なな、温かい心の交流を垣間見て、大げさに言えば日本社会のやさしさの奥深さを見た。「大変だろうなぁ」と感じる心。荷物をすっと持ってあげる行動力。「席をどうぞ」と言葉にすること。感じた思いを言葉にし、行動できることで初めて生まれてくる感謝。ご高齢の方がバスを降りられるとき席の両側で支える動きが連鎖した。「ありがとう。」「がんばりや。」の声が重なり合う。

  そう言えば昨日、「校長先生、うちの生徒は優しいんですよ。足取りが重いのを見ると、先生大丈夫、荷物もとか~って声かけてくれるんですよ。」とある先生が生徒のやさしさについて話してくれていました。市バスで見た、感じる心、言葉にする勇気、行動する力。全部、芥川高校にもあるんですね。

  ありがとう!がんばりや!