H24年12月修学旅行のしおり序文

グアム修学旅行に向けて(修学旅行のしおり序文)


 修学旅行というものは、日本や韓国・中国・台湾等の東アジア特有のものではありません。18世紀イギリスの良家の子弟は、グランドツアーと称して、さまざまな文化や教養を身につけるため、数カ月から数年、ヨーロッパ大陸、特にフランスとイタリアを旅行しました。目的は観光のほかに,各国の上流階級や学識経験者との交流,大学やアカデミーへの短期入学,書物や美術品の購入などでした。(平凡社 世界大百科事典「グランドツアー」)
 ところで高石高校36期生のグアム修学旅行の目的も、観光・ミドルスクールで授業を受け生徒と交流する・グアムの歴史と今に触れるなど、18世紀イギリスの若者の「グランドツアー」とまさに同じです。
 「グランドツアー」と異なるのは、団体旅行であるという点です。団体旅行のメリットは、個人旅行では決して簡単にはできない体験ができることですが、デメリットもあります。団体で行動するため行動に制限があるということ、「何でも見てやろう」と好奇心を持たないでも仲間内で盛り上がって完結できてしまう点です。
 毎年遅刻数を減少させている皆さんのことですから、団体行動は大丈夫と信じています。むしろ、仲間内で盛り上がって完結して、「何にも見なかった」と旅を終えてしまうことがあれば、非常に残念に思います。というのは、君たちがこれから生きていくのは、海外へ出かけることがなくても、海外からヒト・モノ・コミュニケーションスタイルがやってくる時代です。上司や同僚が外国人、バイト先のお客さんが外国人ということがもはや普通のことになっています。日本で暮らしていても、世界的に共通するルールでコミュニケーションが求められるような事態が起こり得ます。そんな時、この修学旅行で経験したことをヒントに、自分で考えて対応してほしいと思います。そのために、「何でも見てやろう」と好奇心満載で出掛けて下さい。
 旅先では思いがけない事が起こることがあります。「何でも見てやろう」という姿勢には、物を学ぶ謙虚さがあり、謙虚さは冷静な判断と合理的な解決法を導きます。この修学旅行に味をしめて、卒業後一人で海外へ出かけて行く人が増えれば、この旅行を企画した先生方も、その甲斐があったというものです。
 覚えていてほしいのは、日本は極めて安全で安心な国で、日本での「当たり前」は、世界的にみるとかなりレベルが高いということです。仲間内で盛り上がって、仲間外への注意を怠ることのないようにして、無事に帰国しましょう。これは、皆さんと学校を信じて送り出していただいた、皆さんの保護者への義務です。

平成25年12月 校長 渡邊 和也