これまでのあいさつで紹介した本について 140108
校長 渡邊 和也
① 『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書) 長谷川 英祐 (著) ¥ 777
働きアリの中には、まったく働かないアリがいます。働かないアリだけを集めると働くアリが現れ、逆に働くアリだけにすると働かないアリが現れます。働いていたアリが疲れてしまったときに、それまで働いていなかったアリが働き始め、常に組織が維持されているのです。働かないアリは怠けて組織の効率を下げる無駄な存在ではなく、むしろ組織を維持するために必要な存在です。パナソニックの創始者、松下幸之助氏が「世の中に存在するものでムダなものは一つもない、生かし方、用い方次第ですべてが役に立つ」と述べておられるように、すぐに結果がでない・直接には役に立たない無駄なように見えることにも打ち込む価値はあると思います。
② 『春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る』(新潮文庫) 宇江佐 真理 (著) ¥ 578
時代小説です。江戸時代、旗本ではあるけれど、官職のない武士がいました。働かないアリと同じで「いざ」という時の要員です。フリーターのようなもので、収入が少ないので、当然アルバイトもしています。そんな主人公が、官職に就かないと幼馴染と結婚もできないので、学問吟味という科挙のような試験に合格することを目指すという話です。バイトが忙しくて受験勉強に身が入らないというのは、どこかで聞いたような話です。主人公はのんびりしていますが、人のために一生懸命に行動します。それが人との縁を広げ、運が開けていきます。これも、直接役に立たない無駄に思えることが逆に役に立つということです。
以上:平成25年7月19日 1学期終業式
③『夜を守る』(双葉文庫)石田衣良(著) ¥ 630
上野のアメ横で四人の若者が、酔っ払いに息子を殺されたという老人に影響を受け、街の空気をちょっとでも変えようと、夜にゴミや放置自転車を片付けるというボランティア活動を始めます。徐々に街の人たちに認められる中で、自分の生き方を見つけていきます。夜の繁華街なので、やくざに絡まれたりもしますが、自分たちから「こんばんは」と声をかけることで、やくざにも「ご苦労さん」と認められるようになります。こんな文章があります。『挨拶の力は偉大だと考えるようになっていた。ストリートギャングのような格好をした若い男たちでも、一度挨拶を交わすようになると、数日後には敵意の消えた表情で話しあうことさえ可能になるのだ。その力は、ほんの数人から始まって、人から人へと伝わっていく。』
以上:平成25年8月27日 2学期始業式
○坂木司(さかき つかさ)の小説です。この4つの小説の主人公たちは、最初あまり深く考えずに仕事にかかわりますが、仕事の奥の深さに気づき真剣に取り組むようになります。どの本もカテゴリーはミステリーです。
④『和菓子のアン』 (光文社文庫) ¥ 700
高校卒業後、就職も進学も決められなかった主人公がデパートの地下の和菓子店でアルバイトを始め、お客さんへの興味と奥深い和菓子文化への関心から、仕事に真剣に取り組み出します。
⑤『切れない糸』 (創元推理文庫) ¥ 924
思いがけず家業のクリーニング店をいやいやながら引き継いだ主人公は、商店街でご用聞きを行う中で、商店街がプロフェッショナルの集団であることに気づき、自分もプロ意識を持つようになります。
⑥『ホテルジューシー』 (角川文庫)¥ 620
予定と違って那覇の小さなホテルで夏休みのアルバイトすることになった主人公は、正義感からホテルの客たちを何とかしてあげたいとお節介で奮闘する中、成長して少し柔軟な考えができるようになります。
⑦『シンデレラ・ティース』 (光文社文庫) ¥ 600
夏休みに歯医者の受付のアルバイトをすることになってしまった歯科恐怖症の女子大生が、患者達の抱えている問題に向き合っていくことで、自分の歯科恐怖症を克服します。
以上:平成25年12月25日 2学期終業式
⑧『16歳の教科書』(講談社新書) \ 819
「ドラゴン桜」という漫画がきっかけとなって作られた本です。国語・数学・英語・理科・社会・心理学のそれぞれの専門家が、「なぜ学び何を学ぶのか」について述べています。
以上:平成26年1月8日 3学期始業式