平成26年度入学式 式辞(H26.4.8)

平成二十六年度 入学式 式辞 

本校正門横の桜は、今日の日のために、先日の寒さにも耐えてくれたようです。

本日ここに、大阪府立高石高等学校 第三十八回入学式を挙行いたしましたところ、公私ご多用にも関わりませず、大阪府教育委員会ご代表をはじめ、ご来賓の方々のご臨席をいただき、高い所からではありますが、心よりお礼申し上げます。また、この場をお借りいたしまして、平素より本校の教育に深いご理解とご支援をいただいておりますことに、重ねてお礼申し上げます。

ただいま入学を許可いたしました、新入生の皆さん、入学おめでとうございます。合格発表の日の感動と気持ちを持ち続け、これから有意義な高校生活を送って欲しいと思います。

さて、義務教育を終えた皆さんにとって、高校で過ごす時間はどんな意味があるのでしょうか。卒業して就職する、または大学や専門学校へ進学するまでの、通過期間だと感じるかもしれません。でも私は、高校とは皆さんが自立する・大人になるための完成教育の場だと考えています。高校を卒業したら、世間は皆さんを大人扱いするからです。実際、世界には成人年齢が18歳である国が多く、日本でも今、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる議論がされています。

では、大人になるとはどういうことでしょうか。大人になりきれない人には、共通して

①人に自分を受け入れてもらうことばかり求めてしまう。

②望まない結果を人のせい・想定外の出来事のせいにしてしまう。

③現状からステップアップしないまま、高望みしたり、逆に簡単に無理だとあきらめてしまう。

という傾向があります。

これらはすべて、他人や自分の行動結果や自分の将来との間で生じた葛藤から、逃げてしまった結果です。大人になるということは、どうすればいいかと悩むという葛藤を経験し、それを乗り越え、①他人を尊重することで自分も尊重され、②行動の結果をありのまま受け入れ、③自分の身の丈と折り合いをつけることができるようになることなのです。そのため高等学校は、実は皆さんに大人になってもらうために様々なプレッシャーをかけるところでもあるのです。

葛藤の乗り越え方は人さまざまで、これだという正解はありません。ただ、葛藤を乗り越えやすい状態を作ることは可能です。そのヒントは、本校の教育目標である、「勉学、部活動、行事の三つの分野すべてに情熱を持って取組み、しかる後に自分の希望する進路を切り拓く、たくましく心爽やかな生徒を育成する」にあります。

人には次に向かって心の中でONのスイッチが入るときがあります。偶然に入るのではなく、全力で取り組んだ後でONに入るように思います。たとえば野球のバッターは中途半端なスウィングをした後、すぐには1塁に走り出せません。フルスウィングすれば自然と体が1塁に向き、全力でダッシュできるのです。同じようにどんなことでも全力で取り組めば、やりきった感がそれまでの葛藤を感じていた自分をOFFにし、自然に次に向かってONのスイッチを入れるのです。だから、新入生の皆さん、高石高校での生活のそれぞれの場面で、全力を出して取り組んでください。そうすれば、自然に次に進む方向が見えてきて、葛藤を乗り越えることができるはずです。

さて、最後になりましたが、本日の入学式にご列席をいただきました保護者の皆様方、心からお祝いを申しあげます。私たち教職員はサッカーで言うPlayers Firstの精神を活かし、生徒の皆さんのあとおしをしていきたいと思っています。Players Firstで最も重要なのは「失敗する自由」を認めることだと言います。生徒たちは、自分で取り組んでは失敗を重ね、その経験をもとに葛藤を自分で乗り越える方法を見つけ、またその中で「自由」には「責任」が伴うこと、チャレンジにはリスクがあること、真の自由は身勝手とは対極にあることを身を持って学んでいくものと信じています。保護者の皆様方におかれましても、義務教育とは異なる、高等学校の立場を十分にご理解いただきますと共に、学校が意欲的・積極的にお子様方の教育に専念できますよう、「失敗する自由」の良き理解者として、物心両面にわたってご支援・ご協力をいただきますようお願いを申しあげ、式辞の結びといたします。 

平成二十六年四月八日  大阪府立高石高等学校 校長  渡邊 和也