10期生の旅立ちにあたって

3月7日(土)、第10回卒業証書授与式を行いました。本日の校長通信では式辞の内容を以下のとおり紹介させていただきます。

 10期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 皆さんは、誰でも自由にネット上で知識を得ることができ、自ら発信することが可能な時代に生きています。このような情報化による変化に加え、生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新により、社会 構造や雇用環境は大きく変化しており、知識をたくさん持っていることで課題を乗り越えることのできた時代は終焉を迎えているといっても過言ではありません。
未来を担う皆さんには、課題を見出し、その課題を解決するために必要な知識をネット世界に散りばめられている膨大な情報源の中から選択し、自分なりの考えを構築して、周りの人々と議論しながら、周囲の人々を巻き込み、行動に移していく、そんな「学び」が求められているのです。
 このような「学び」は、槻の木生にとって、決して不得意なことではありません。
 その一点目の根拠は、槻の木生が努力を惜しまないことです。日々こつこつと真摯な態度で努力を継続することです。イギリスの哲学者であり数学者でもあるバートランド・ラッセルの著書の中に、「fruitful monotony」、直訳すると「実りのある単調さ」という言葉が出てきます。これは、ごくありふれた毎日の中にこそ大切なことがあるという意味です。単調であっても日々の努力は、「学び」を続けるに当っての学習態度の基盤を支えるものです。
 二点目の根拠は、槻の木生のコミュニケーション力の高さです。一人で学ぶことも重要ですが、学んだことを他人と共有したり、議論をして深め合ったり、チームとして課題解決に取り組むことがこれからの「学び」には必要になってきます。「受験は団体戦」。この言葉に象徴されるように、「仲間がいるから頑張ることができる。」、「応援してくださる方がいるから、高い志にむけてチャレンジできる。」という経験をしたと思います。一人だけでは解決できないような課題でも、同じ志を持つ者が支えあうことにより解決することがあるのです。そのためには、他人と上手くコミュニケーションをとることが必要ですが、皆さんが身につけているコミュニケーションの基本となるあいさつなどのマナーは、誰に対してでも通用するものです。
 三点目の根拠は、槻の木生のおおらかさです。近年、プロセスよりも結果だけが求められる傾向が強くなっていますが、良い意味での槻の木生のおおらかさを生かして、プロセスも大事にしてほしいのです。明治時代の文豪、夏目漱石は、「模倣と独立」と題した講演の中で、成功について、次のように語っています。
「同じようにやっても、結果がよければ成功だというが、同じ事をしても結果が悪いとすぐにあの人のやり口は悪いという。そのやり方の実際を見ないで、結果ばかりを見て言うのである。そのやり方の善し悪しなどは見ないでただ結果ばかり見て批評をする。それであの人は成功したとか失敗したとか言う。けれども、私の成功というのはそういう単純な意味ではない。たとえその結果は失敗に終っても、善いことを行い、それが同情に値し、敬服に値する観念を起させれば、それは成功である。そういう意味の成功を私は成功と言いたい。」
高校の卒業で、「学び」が終わるのではありません。むしろ、これからが本当の「学び」のスタートなのです。卒業後も決して皆さんは一人ではありません。嬉しい時でも、疲れた時であっても、どうぞ母校を訪ねてきてください。私たちはいつでもみなさんを歓迎します。
 結びに、心よりみなさんの卒業を祝し、みなさんが本校で出会った友人や先生、多くの人々との絆をいつまでも大切にされ、健康で活躍されることを祈っております。

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