~ 夏休み前の講話 ~
サッカーワールドカップがドイツの優勝で幕を閉じました。今回深く考えさされたのが、準々決勝戦・コロンビア対ブラジル戦で、コロンビア選手がブラジルの主力選手にケガを負わせた件です。その場面を見ると、いかにも背後からとび蹴りをしたように見えて仕方ありません。相当危険な行為だと言えるでしょう。さらに重大なケガを負わせています。だた、そのゲームの主審はイエローカードやレッドカードを出していませんし、国際サッカー連盟もそれを支持しています。
そんな危険な行為が許されるのか、と考えていた矢先、私は吉本新喜劇のある女優さんを思い出しました。その方は、相当なスピードで壁に激突するという激しい芸を持っているのですが、最初に見たときに「上手い!」と思いました。彼女は壁にぶつかる直前に、上に飛び上がるのです。これは、物理的に理にかなっています。走ったままぶつかったら、大道具が多少の衝撃を吸収してくれるでしょうが、かなりの反動を受けます。しかし、上に飛び上がれば運動エネルギーの大きな部分を上向きに変換するので、水平方向のそれはかなり抑えられます。そしてその女優さんは飛び上がった先で、手のひらなど広い部分で壁にぶつかり、衝撃を和らげます。
今回のケースで、コロンビアのその選手は、ブラジル選手に与える衝撃を減らすために上に飛んだと考えられないでしょうか。そしてこのようなプレーは常に行われていて、主審も「とび蹴り」とは判断せずに、「危険回避のテクニック」と判定したからこそ、大きなペナルティーを取らなかったのではないかと思うのです。さらに、膝が腰骨に当たってケガをさせたのは意図ではなく、結果としておこったことで、悪意がないのだから罪は問えないという考え方も根底にあります。これは哲学者・カントの「動機説」に則った判断です。逆の場合はどうでしょうか。サッカーのルールにはあるのです。それは相手のペナルティエリアでわざと倒されたふりをする「ディスプレイ」という行為です。騙そうという悪意・相手をおとしいれて自分を有利にしようという悪意が根底にある行為だから、これは罰せられます。意図と結果の問題については、これから先も一緒に考えていきましょう。
さて、夏休みの期間、日頃仕事と勉学を両立させている忙しい毎日から少し解放されます。時間をゆったりと使い、日頃できないことをしてみてはどうでしょうか。本校の近くには茨木市中央図書館もあります。午後8時まで開いていますので、本やDVDなどにじっくりと接することも可能です。是非、日頃と違ったパターンで生活することをお勧めします。また、仕事に日頃以上に打ち込むのも良いかもしれませんが、暑さでの注意力の低下にはくれぐれも気を付けてください。君たちの健康と安全を祈っています。