~ 前期終業式講話 ~
今年度の課業が半分終わりました。4月からの生活で、みんなには成長の実感があるでしょうか。私にはわかります。1年生は特に大きく成長したと思います。今もちゃんと前を向いているし、あいさつの声もずっと大きくなりました。毎日きちんとした生活をしていることがわかります。
あるとき、始業前に校外を回っていると、「あ、先生!」と声をかけた1年の生徒がいました。「先生、オレ今日蜂に6か所も刺されたんやで」と、腕をめくって見せます。確かに小さな突起がいくつもできていて、痛々しいのです。「保健室で消毒してもらった方がええで」というと「いやもう痛くないねん」。「そうか。でもこんなところに座り込んでたら蚊に刺されるで。怖い病気もあるんや。高熱が出るやつ」と言うと、他の生徒が「あ、それ知ってる。『デング熱』やろ。高槻でも出たんや」と、声を上げました。周りの生徒たちは「それ、何?」と互いにしばらくワイワイとやっていましたが、「こわっ。刺されたらあかんやん。教室行こ」と立ち去りました。この時、私が心強く嬉しく思ったのは、一人が知っている情報を友人たちに伝達したことでした。
かつて、ネアンデルタール人という種族がいました。世界史の教科書ではなんとなく野蛮に描かれていますが、死者に花を添えたりしたことが証明されている知的な人類でした。脳の容量も今の我々より大きめ、体も大きめ、という利口で強いはずの種族でしたが、どういうわけか滅びてしまいました。われわれの祖先との競争に敗れたわけですが、どうしてでしょう。頭の骨の構造を調べた最近の研究では、ネアンデルタール人は上手く声を出せず、たくさんは話せなかったのではないかというのです。どこへ行くと獲物がたくさん見つかる、どんなふうにすれば狩りがうまくいく、こんなキノコは食べてはいけない、などなどの発見・情報はことばで伝えますが、うまく話せなければ仲間に伝わりません。これが何千年何万年も積み重なり、結局大きな差になってしまったのです。
我われは、ことばのやり取りのおかげで生き残ったとも言えるでしょう。使う道具は文明の発展とともに多様化しました。「スマホ」でも結構です。ことばを大切に使い、仲間と情報交換を活発にしてください。経験や体験を伝え合ってください。これは自分の世界を広げ、視野の広い大人になることにつながると思います。