定時制の冬

     ~ 中庭の池に氷が張り始めるころ ~

寒い日が続いています。卒業を目前に控えた生徒は、考査期間に入りました。府立高校はどこも同じく、教室の暖房にはエアコンが使われており、確かに温風が出ますので外や廊下より数段暖かいのですが、夜気や人数の少なさもあって寒々しい感じもします。生徒と、「この辺が定時制のつらいところや」と笑い合ったりしていますが、遠赤外線効果もあった昔のガスストーブの暖かさが、いろいろ欠点もありましたが懐かしく感じられます。私も部屋で19度に設定したエアコンを使っていますが、やはり足が冷えます。

 前に実習の授業を工場に見に行った際、担当の先生に「ここ暑いし、冬は寒い。どちらがまだましですか?」と、氷の塊のような機械を前に尋ねますと、即座に「夏です」と答えられました。「冬は指先の動きが悪くなるです。指導もしにくいし、危険なことも多いです」。暑さ寒さに対する好悪でなく、仕事を行う条件を第一に考えられていることに、感動してしばらく言葉が出ませんでした。真に生徒に学んでほしいのは、仕事に対するこのような姿勢です。

 ここしばらくの強い寒風もあって、大阪にしては珍しく多くの星が見上げられました。そんな放射冷却効果もありそうな夜、見回りの先生に声をかけますと、「確かに寒いですが、今日は池に氷ができていません」と教えてくれました。池に張った氷は朝気付くものですが、考えてみればでき始めるのは夜中です。そんな時間、生徒は三々五々、家路につきます。