日々の積み重ね

           ~ 終業式の講話 ~

 本校では、この4日に27名の卒業生を送り出し、学校が少し寂しくなりました。卒業した先輩たちの中には4年間無遅刻無欠席、陸上競技で3年連続全国大会出場、希望した大学への進学を実現した人たちもいます。これら先輩たちに学んで、一つでも「自分はこれを頑張った」、「こんな夢を実現した」という思いをもって卒業できるように、毎日の積み重ねはほんの小さなものですが、一日一日を大切に生活してください。 

私は一般に言う「クラシック音楽」を聴くのを40年以上趣味にしていますが、いま聴かれている有名な曲は、音楽の歴史からみるとほんの表面のものにしかすぎません。中世まで千年ほど遡ると、今からすれば民謡やお経、踊りのための音楽になります。曲も楽器も素朴なものです。また、イスラムの影響を受けている場合もあります。それが、今聴いているような曲になるまで、人から人へ伝えられ、あるいは修道院の図書館に楽譜として蓄えられ、何百年か後にそれを誰かが見て学び、といった多くの時間をかけた、人の努力の積み重ねの結果なのです。有名な曲で薄っぺら演奏を聴くことがありますが、楽譜の裏にある歴史を深く研究していない演奏家によるものなのだろうと思います。 

このことは君たちが学ぶ工業の技術にも通じるのではないでしょうか。近頃、戦艦「武蔵」が発見されたようです。この船は「大和」のあとに同じ設計図で作られたのですが、見えないところで多くの改良がされているということを、以前読んだことがあります。その結果ずいぶん使い勝手がよかったということですが、これも積み重ねの一つです。積み重ねなしに、一足飛びに実現できるものは何もない、ということをよく知っておいてください。できたように見えても、底の浅いものでしょう。これは、君たちの夢の実現や技術の発展でも同じことです。 

この後の今年度最後のLHRでは、担任の先生に、成長したところ、日々の積み重ねの結果を評価してもらってください。ひとつ褒めてもらい、ひとつアドバイスをもらってください。次は4月8日の始業式で会いましょう。