夏休みを健康に過ごしましたか?事故の報告もありませんので、安心しています。
さて、前に少し電気の話をしましたので、続けたいと思います。その前にみんなに質問します。ここに12Vと1万Vの電源があった時、もしどちらか触れと言われたらどちらを選びますか?実際にはないことですが。実はこの質問には大切な情報が抜けているのです。1万Vの方が恐そうですが、冬にセーターを脱ぐときにパチパチ音がすることがありますが、これは1万Vです。少しチクッとすることもありますが、ここが大切な情報の部分で、電流の大きさが小さいので、感電しません。体に害はありません。電圧だけでは判断できないのです。一方12Vですが、本校にあるアーク溶接の機械だと220Aの電流を流すことができます。この220Aという数字を見て、腰が引けました。これに指で触れたら、指先が溶接棒のように火を噴き、一瞬で焼け散ると考えられます。命にも係わります。
ここで私のアンプの制作過程での感電話になるのですが、当然ながら、電流は30mAから270mAの「弱電」の世界です。私が二度とごめんだと思ったのが、交流280Vで、270mAの電源に右指が触れたときのことです。ブルブルという毎秒60回の痺れが左肩まで届きました。体の中心をえぐるようなしびれ方でした。もう一方は、直流260Vで30mAの整流後の部分に触ったことです。この時は一瞬、何が起きたのかわかりませんでした。体の表面がぞっくっとした感じで、怖い話を聞いて鳥肌が立つという感覚でした。ただ覚えているのは、その範囲が左肩までだったということです。
これらの体験から、私は交流は体をえぐる感じ、電圧は届く範囲、電流は痺れの強さと体で覚えました。その昔、テスターが普及していない頃、自作するアマチュアはわざと測りたい部分に触って調べたと聞いたことがありますが、大体のことはわかっただろうと思います。
さて、日本の家庭用コンセントの電圧を知っていますか?100Vです。外国では220Vのところもあります。明治時代に100Vに決定しました。これならコンセントに触れても、大人であれば届く範囲は腕だけで、心臓には届きません。安全と言えます。これで相当多くの人の命が救われたと思います。100V化を推進した方は、自分の体で実験を重ねたといいます。
この7月には害獣よけの電気柵の電気が川に流れて人の命が奪われたりしました。また、君たちが学んでいる自動車の世界でも、かつては16Vのバッテリー位しか積んでいませんでしたが、ハイブリッド・カーなど大きな電圧・電流を扱っています。自動車の世界で生きる上でも、電気の基礎的な知識や理解を深めてほしいと思います。
最後に授業に臨む姿勢についてですが、7月にある生徒が授業中にスマホをしまうように注意されて、「スマホより面白い授業をしてほしい」と答えたということを聞きました。基礎的な学習は、ある面単調で面白くないものです。スポーツ選手でも、華々しい試合の陰にどれだけつらく味気ない練習をしているかわかりません。君たちはこの学校で将来の仕事や人生を切り開く、その基礎固めをしている訳ですから、真剣に授業に取り組んでください。