本日、午後から「私達まつり」が開催されました。「私達まつり」は、国語科の小山秀樹先生が本校に着任した翌年度の2000年4月に立ち上げた学校設定科目「私達が立っている場所」(錬成現代文)の開講25周年を記念して催された「まつり」です。
本日の企画は、5,6時間めに本年度は2講座ある「私達が立っている場所」の授業で、現在高校3年生の生徒たちに、「私達」で同じ教材を学んだ世代の違う3人の卒業生が授業を行うというものです。授業は一般公開とし、小山先生と縁の深い3名の大学の先生をお招きして、後半は研究協議を行いましたところ、40名を超えるたくさんの方にお集まりいただき、大変有意義な「まつり」になりました。有難うございます。
「私達は今こんな風に考え、生きていますスペシャル」と称して授業をしてくれた卒業生と研究協議会を成り立たせてくださった大学の先生方を紹介します。
【本日の授業者(卒業生)】
1「である」ことと「する」こと 丸山真男 に関連して
藤本 藍里さん(76期〈総合学科26期〉)京都女子大学法学部1回生
2「文学のふるさと」 坂口安吾 に関連して
坂井田 暖さん(74期〈総合学科24期〉)看護学生で来春から看護師として勤務
(実習中につきビデオレター)
3「安楽」への全体主義 藤田省三 に関連して
森 木乃美さん(66期〈総合学科16期〉)私立中高一貫校英語教員、奈良女子大学院文学部卒
【大学の先生方(小山先生との関係)】☆有難うございました!
京都教育大学教育学部特定教授 全国大学国語教育学会理事長 植山 俊宏 様
(25年間「私達」を見守ってくださった)
関西大学社会学部教授 科学技術史 杉本 舞 様
(小山先生の前任校で小山先生に教わり、大学で森さんを教えられた)
京都大学・関西大学非常勤講師 桝井 英人 様
(小山先生の長年にわたる国語教育の相談相手・本日の研究協議会の司会進行)
卒業生による授業も研究協議も、この場で書き尽くせないほど濃厚で味わい深いものでした。「私達が立っている場所」の「私達」は、ここにいる世代を超えてつながりをもった「私達」の皆であることを否応なく実感させられました。小山先生は、そこには「ことばのチカラ」が作用していることを、この授業を通して生徒たちに体感させようとされているのだと感じました。
25年間で「私達」を学んだ生徒は800名になります。今日配布された記念誌には、彼らの「ことばのチカラ」がぎっしりと詰まっていました。「私達」の学びが、本校を卒業して歳月が経った今も、一人ひとりの生き方に影響を与え、それは、to be continued... これからも続いていくのですね、と小山先生の言葉が印象的でした。皆さま有難うございました。
結びに、小山先生の「ごあいさつ」の文章を掲載します。本日配布された冊子の巻頭言です。「私達が立っている場所」の学びの姿や、今日の「私達まつり」の主題を、より鮮明に感じ取っていただけるのではと思います。
【ごあいさつ】
本日はお忙しいなか、また校務多用の折、平日にもかかわらず多数のみなさんにご来校いただき、本当にありがとうございます。 学校設定科目「私達が立っている場所」を開講して25年になります。現代の課題をつかむことばを養い、養ったことばで課題を超えて生き抜く力をつける授業をつくりたいと現在まで取り組んできました。「私達」では、次のような教材を扱います。
1 「である」ことと「する」こと(丸山眞男)<である><する><価値の蓄積>
2 ハーバード白熱教室(東大安田講堂編)<人間の尊厳><自由・自律>
3 文学のふるさと(坂口安吾)<ふるさと><大人の仕事><救いがないことが救い>
4 安楽への全体主義(藤田省三)<能動的ニヒリズム><喜びという感情の消滅>
5 歴史としての科学(村上陽一郎)<対自化><知的冒険>
6 君たちはどう生きるか(吉野源三郎)<人間は水の分子><油揚事件>
7 君たちはどう生きるかスピーチ(受講者)
8 パニック(開高健)<ネズミの大移動><組織と人間>
9 主体としての人間のゆくえ(「私達」総集編)<私達はどう生きるか>
授業では教材のことばを深く掘り下げ、確かな読みとりをめざしました。学習が進むにつれて教材のことばは、学習する生徒ひとりひとりが持つ自分自身のことばになります。卒業した受講生は、自身の持つことばを今度は仕事や生活にさらされながら、これまで以上に鍛えられたに違いありません。
今回まとめた「私達は現在、こんなふうに考え、生きていますスペシャル」には、受講生のこれまでに獲得したことばが満載です。「私達まつり」は、世代を超えて人のことばを聴き、共有し、「うん、よし。」とこれからの自分自身を励ます試み、運動です。
「私達が立っている場所」の受講生は、およそ800名を数えます。16期森木乃美さん、24期坂井田暖さん、27期藤本藍里さんの世代の違う3人の受講生が、高校生に向けることばは、今日、どのような場面をつくるでしょうか。「私達」の授業を25年見守っていただいている植山俊宏先生は、今日もおいでくださいました。かつて私の生徒であった杉本舞さんは、森さんが教わった先生です。違う世代がことばを交わす場面をつくることは、世代を超えたことばの蓄積となり、現在と今後の自身と社会を支え、豊かにすることになると考えます。そうした運動を続けることによって、私は、次の世代のことばの生活に資したいと思います。(2024.11.15)