また、オーストラリアの話です。20年以上前の話です。
Year10で日本語を習っていたSimon。彼は私の生徒の中ではすごくまじめで、勉強熱心でよく質問をしてくれました。自分は当然日本語のネイティブスピーカーなので楽々答えられるはずと思っていたのですが、彼はいつも難題を持ってきました。
A 体育館でバスケットの試合があります。
B 体育館にバスケットボールがあります。
どう違うか説明できますか?
英語に訳して説明しようとすると、
Aは There is a basketball game in the gym.
Bは There is a basketball in the gym.
Simonは首をひねり、「君は日本で暮らしていた日本語の先生だよね」と念を押す。湿気のない砂漠の街なのに汗が出る。
ちょっと、日本語を外国語として眺めてみればわかるはずなのにネイティブにはそれが難しい。 Aは場所で「行事」がある。Bは場所に「もの」がある。これを普段、私たちは何気なく使い分けているのですね。
C 体育館にバスケットボール部員がいます。
違いは簡単ですね。ものが「ある」、人が「いる」。
感染拡大を防止するために、行事の縮小、中止、延期を決断しなければならない事態に直面しています。でも、去年と違って、今年は生徒の皆さんが学校に「いる」のです。何かを伝えたいときにみんなが学校に「いる」。直接話しかけられる。だから失うものがあっても何かを生み出せるのではないかそう思っています。みんなもここにいる、先生方もここにいる。それを確かめるために明日も皆さんに「おはようございます」を投げかけます。