築山の石碑

 一昨日から3日連続モニュメントシリーズになってしまいました。今日は生徒の皆さんもよく知っている築山の斑れい岩(黒御影石)の石碑です。

 石碑には「誠実剛毅・和親協同」の校訓が書かれていることも知っていると思いますが、誰が書いたかまでは知らない人が多いのではないでしょうか。

 校訓の左側に小さく「福井謙一書」と刻まれています。旧制今宮中学26期生として本校で学び、1935年3月に卒業された本校のOBです。1918年10月4日生まれですので、1年生の生徒の皆さんの90歳上の大先輩です。福井先生は京都大学で教鞭を執られながら化学者として研究を重ね、1981年に「化学反応過程の理論的研究」によりアジア発のノーベル化学書を受賞されました。

 福井先生の受賞理由は、「フロンティア軌道理論」を提唱したことにあります。全ての原子は、原子によって決まった数の電子を持っていて、電子は、軌道と呼ばれる電子2個まで入る殻のようなもの(電子殻)の中にいて、軌道のエネルギーが低い順に電子が2個ずつ配置されていますが、福井先生は、たくさんある電子のうち最前線(フロンティア)にいる電子しか化学反応に関与しないということを初めて見い出しました。これが「フロンティア軌道理論」、当時は画期的な発見だったのです。

 今では高校化学の授業で、様々な反応について「最外殻の電子が反応に関与する」ことを学びますが、なぜ反応が起こったり起こらなかったりするのかということを、初めて理論として体系化したのが福井先生です。当時の化学界に大きな衝撃を与えたそうです。

 福井先生は1998年1月に79歳で亡くなられましたが、築山のモニュメントの直筆をかたどった文字はいつまでも褪せることはないでしょう。

 モニュメントの前に、秋に植えた水仙の芽が伸びてきました。立春のころには咲くでしょうか。