本校では、支援教育課を通じダイドードリンコ株式会社様より寄贈いただきました「ペーパークラフト(自動販売機)」を活用し、高等部の生徒がかかわることができる授業づくりを行いました。 以下に、その実践を報告させていただきます。
活用事例①
今年度より、高等部で新しく「職業」の授業に取り組んでいます。 この「職業」の授業での学習目標は、「将来の就労や社会参加に向け、清掃や事務作業、軽作業などの具体的な作業能力の向上」と、「社会的自立へ向けたコミュニケーション能力の向上」としています。
今回、「職業」の授業で、この教材を活用することにしました。 この教材を使った授業での学習目標を、「組み立て説明書を見て、ひとりの力で作り上げる」こととして、できるかぎり生徒がひとりで作業に取り組むことができるための工夫を教員間で事前に確認し、学習環境を設定しました。
授業の始まりでは、作業を行ううえで、3つのルール(写真参照)の確認を行いました。
特にルール③「手伝ってほしいところは、丁寧に依頼する」ことについては、生徒たちにとって最も難しい課題でした。 教員に対しどの部分をどう手伝ってほしいのかを、適切で具体的な依頼をすることがいかに難しいかということや、逆に、わかりやすい言葉で教員に質問することができれば問題を解決できることを、よく理解できたと考えています。
生徒たちは、組み立て説明書の理解が不十分なまま作業を進めたため、缶が出てこないものになるなどの失敗も経験しました。
また、失敗に気付いた時には、生徒が教員に質問の依頼を繰り返し行いました。 具体的には、質問をする際、この教材に付属していた写真付きの説明書と自分たちが作っている実物を教員に示しながら、わからないことを質問することで、より具体的に間違ったところを理解できることも学べていました。
生徒4名は、意欲的に集中力を切らすことなく製作に取り組み、作品を仕上げることができました。
活用事例②
できあがった「ペーパークラフト(自動販売機)」は、他の学習グループの「お金の計算」の単元として活用しました。
お金の投入口に、おつりのないように金額を入れる設定で取り組み、100円、130円、160円を財布から出して購入する練習を行いました。
ボタンを押すとミニチュアの缶(紙製)が出てくる仕組みになっていて、生徒一人ひとりが楽しみながら、財布から事前に設定した金額の小銭を取り出し、購入するという模擬学習ができました。
これは、自立活動での「環境の把握」における領域の学びです。 「感覚を総合的に活用した、周囲の状況についての把握と状況に応じた行動に関すること」と関連づけ、教科学習「数学」において、<金種の理解と金銭の処理>に結び付けた学びを目的としています。
このように支援学校において、日常生活面の指導を行ううえでも自立活動と教科学習とは、密接な関係性が必要となります。
児童生徒一人ひとりが、こうした模擬授業を通じて、実際に社会に出た時に、「やったことがある!(したい)やればできる!(できた)やってみよう!(つたわった)」と思える力を育むことができました。
本教材(ペーパークラフト)は、教材としてどのような価値があるのかを分析した教員の教材感(工夫と発想)により、学年やグループを横断的に活用できる学習教材となりました。 一つの教材に複数の意味を持たせ、障がいの程度が異なる学習グループの生徒たちが、それぞれ異なる学習目標をたて、生徒一人ひとりに応じた手立てにより、確実に生徒が必要とする学びにつなげることができる教材でした。 ダイドードリンコ株式会社様の寄贈に大変感謝しています。 ありがとうございました。
今回の寄贈だけでなく、本校や他の支援学校は、多くの企業様等から、教材のみならず、コロナ禍における物品等、温かい支援をいただいております。 本校においても、一つ一つの支援を大切にしながら、児童生徒たちのために役立てていきたいと考えております。