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4 様々なものの見方を身につける(夏休みシリーズ①)

夏休みが近づいてきました。夏休みというのは、授業が休みというだけで、生徒の学びそのものを休む期間というわけではありません。生徒は常に学び続けています(実は大人も学びの連続のなかで暮らしているはずです。たとえ、何歳になろうと、その年齢をその状況で生きるのは初めてなのですから。)長い休みの間には、ふだんとは違う課題に向き合って、それに対処する力を身につけることができるのです。同じ能力を身につけるのでも、課題の種類が違い、状況が変わることで、その学びが質的に向上します。

私が堺上高校の生徒に身につけてほしい力の一つに「色々なものの見方をすることができる」力があります。複数の視点でものごとをとらえる力です。なぜ、そういう力が必要なのでしょうか。我々が生きている日々はストレスに囲まれています。ストレスそのものは悪いものではなく、それがあるおかげで我々は果たすべきことをすることができています。けれども、それがあまりにも強すぎると様々な支障が生まれることも事実です。ストレスに対処するときに、ものの見方が一つしかないとどうにもならないことが多いでしょう。

わかりやすいように極端化した例をあげてみます。ごはんは無くてパンだけが提供される施設に入っている人が二人いて、Aさん、Bさんとします。Aさんは「主食として人間は毎日米のごはんを必ず食べないとだめだ」という考え方の持ち主です。Aさんは仕方なくパンを食べるでしょうが、ごはんを食べられないことで大変なストレスを抱えこんでしまうでしょう。一方のBさんは「ごはんでもパンでもどちらかを食べられればよい」という考え方の持ち主です。主食の食べ物に関する限り、Bさんはほとんどストレスを覚えないはずです。

ストレスに対処する力は「レジリエンス(修正力)」と呼ばれています。「ストレスに負けずに目の前のピンチやトラブルを乗り越えることのできる精神の力」です。この力のほとんどは、いかに物事を色々な角度からとらえて判断できるか、という点にかかっているのです。(授業の時に行われる話し合いも、他の人のものの見方や考え方を知ることで、自分の思考を柔軟で質の高いものにするためのものです。たとえば「こんなひどいことをする主人公はだめな人間だ。」と思い込んでいる生徒が「この主人公にも理由があってこんなことをするのだ。」という他の生徒の意見を聞いて、自分の考え方がすべてではないことを知る経験が大切なのです。)

さて、最初に戻ります。夏休み中には学校外でふだんとは違う経験をします。たとえば自分と違う年代の人と出会い、違う地域や国の人と交流することもあるでしょう。そういう経験はものの見方を増やしてくれるので「レジリエンス」を身につけ、高めるための絶好の機会です。上校生の皆さん、色々なものの見方ができるようになる、ということをこの夏休みの目標の一つにしてみてください。