• トップ
  • 2018年
  • 7月
  • 7 風習や文化について調べてみよう(夏休みシリーズ③)~「なぜ土用にうなぎを食べるのか」~

7 風習や文化について調べてみよう(夏休みシリーズ③)~「なぜ土用にうなぎを食べるのか」~

我々の暮しには様々な風習があります。法律で決まっているわけでもないのに、特定の時期などに昔から定められた行動をするのです。そういうふうに人々の生活の中に伝えられてきている文化のあり方を研究する学問を「民俗学(みんぞくがく)」といいます。民俗学の知識があると自分たちの生活の意味合いを深く知ることができます。私は上高生のみんなに生活に関わって自分の心を豊かにする視点を身につけてほしいと思っています。

若い頃の同僚に民俗学の大家のベテランの先生がおられました。その方の影響で私は今でも民俗学にとても興味を持っています。たとえば、この時期にいつも話題になりますが、なぜ「土用(どよう)の丑(うし)の日」に「うなぎ」を食べることが多いのでしょうか。スーパーの広告やテレビの特集など、「うなぎ」という言葉が飛び交いますね。今回は、その背景に季節のめぐりと我々の健康の結び付きに関する文化があることを上高生のみんなに知っておいてほしいと思って書いてみます。

「土用」というのはある一定の期間のことで、季節の変わり目にあたります。季節は四つありますから、土用も年に四回あります。土用は季節を前に進めるはたらきを持っているのです。つまり、季節の変化を生み出す力があるのです。そういう大切な土用のなかでも、夏の土用は四季のめぐりの中央の中央にあたる、もっとも重視されるものなのです。ところが、この夏の土用は「火」の気(十二支でいうと「未(ひつじ)」)に満ちています。暑熱の権化です。強すぎる「火」の気は我々の体力を奪います。今でも熱中症には気をつけなければいけませんよね。この「火」の気をやわらげるのは「水」の気です。「火」の気の「未(ひつじ)」の反対にあたる「水」の気が十二支でいうと「丑(うし)」になるわけです。猛烈な「火」の気を中和させる「水」の気を持つのが「丑(うし)」の日になります。だから、この日、夏の土用にある丑の日を大切にしよう、そうすることで健康を保とう、ということで様々な風習が行われるのです。

「丑(うし)」の日だからスタミナ源として「牛」を食べればいいと思ってしまいますが、昔の日本の多くの地域では「牛」を食べる習慣がありませんでした(この日に「牛」を大切に洗うということもあったようです)から、頭に「う」のつくものを食べるようになりました。「うなぎ」もそうですが、「うどん」や「うめぼし」を食べるところもあります。(平賀源内という人が、夏に売り上げが落ちるうなぎが売れるようにということで特に「土用のうなぎ」を広めたと言われています。)昔から伝えられてきたものを大切にしながら、暑い時期に健康面で理にかなったものを食べる、それこそが人々の生活の知恵です。どうでしょうか。新しい情報を追いかけるのも大切かもしれませんが、こういう知識は我々を懐かしい昔の人々の暮らしと結びつけて心を豊かにしてくれますね。この夏、上高生のみなさんも、不思議に思う習慣や文化があれば、休み期間にでもぜひ色々と調べてみてください。