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38 上高生のみんな、基礎的な知識と学力を身につけよう ~勉強がなぜ必要なのか~

今回は久しぶりに上高生のみなさんに対して書くことにします。

先日、校内の様子を見にあちらこちらに行っている時に、3年生の男子生徒から階段で声をかけられました。その時の質問の大意は「校長先生がブログで書かれているようなことはどこで勉強されているのですか」というものでした。彼は民俗学的なことなどに興味を持っていて、私のブログ記事を読んでくれているというのです。昔から好きこそものの上手なれ、と言いますが、私の場合はもともと古い文化に関心があって、歴史や文化にワクワク感を持つタイプでした。そういうワクワク感のことを「ロマン」とも言います。どのような分野でも自分が活躍したり、存分に楽しんだりしている姿を想像して胸が熱くなることがありますね。それです。それがロマンです。人間は自分がワクワク感を持っていることに対しては、大きなエネルギーを発揮することができます。

一人の人間がすべてのことにワクワク感を持つことはできないでしょう。しかし、できるだけ多くの分野でロマンを抱くことができれば、それだけ多くの能力を身につけることができるはずです。以前にも書いたような粘り強く取り組む力もワクワクさせる目標があるからこそです。

「そんなこと言ったって、無理にワクワク感を持てるものとちゃうやん」という声が聞こえてきそうです。たとえば、苦手意識を持っている教科の学習にワクワク感を持つのは至難の業だということはよくわかっています。私が教えてきた生徒からも「自分は勉強というものすべてにワクワク感を持つことができないから、勉強するのは無理だ」という言葉も聞いたことがあります。

少し視点を変えてみましょう。我々が物事を行なう時にうまくいくかどうかは何で決まるでしょうか。一番肝心なことは、自分が持っている知識記憶のデータベースから、その時に状況にうまくあてはまるものをひっぱり出してきて、その場面にふさわしく活用することです。たとえば、外食でおいしいラーメンを食べたくなった時に、今まで行ったことのある店や友達からの「あこの店うまいで」などという情報を持っている店の中から、その時に食べたい種類のラーメンや店の雰囲気などを考えあわせて候補をしぼり、今の場所からの移動距離で最終的に決めたりしますね。そうして「うまいラーメン」を堪能して満足するわけです。もちろん、スマホなどで情報を得ることもできますが、自分が実際に経験した味のほうが確かなのは言うまでもありません。

ところで、こういうデータベースと行動をうまく結びつける力は実際に経験しないと身についていきません。各分野で名人や達人と言われている人たちは、この力に特段すぐれている人たちです。そして、それらの人たちに共通しているのは、まず知識や興味が幅広いことです。我々の知識は個別に単独で記憶されているのではなくて、システムのかたちで記憶されています。幅広い知識があるというのは、それだけその人の知のシステムが巨大だということです。自分が今学んでいることがこれからどういうかたちで役立つかは今の時点ではわからないことが多いのですから、高校生も将来に備えて、自分の生活を充実させるために色々な知識を身につけておくことが必要なのはわかりますね。

それから、学校の勉強は実は知識と行動を結びつける練習をしているとも言えるのです。複雑な数学の計算や難しい国語の文章読解など、結びつけをスムースにするための力を鍛えていると言えるのです。この力が向上すると、いろいろなパフォーマンスの質が高まって、能力の高さへと結びつくのです。(スポーツや楽器の演奏を思い浮かべてもよくわかと思います。試合における状況判断とするべきプレー、聴衆の雰囲気の察知とふさわしい演奏の仕方。)

回り道をしましたが、将来の自分の生活を、いや自分だけではなく、自分と関わる人たちの生活を充実したものにするために、我々は学校でもベースとなる知識、基礎的な学力(考えて、判断して、表現する力)を身につけているわけです。人間は将来の自分の充実した姿を想像するとワクワクとしたロマンを感じることができる存在です。コツはその想像に少し具体性を持たせることです。(はっきりとした具体性を持つ想像が夢、希望、目標になります。)最初に紹介した男子生徒のように、自分の興味関心のある分野があるのであれば、それを深めると同時に、他の様々な分野に興味を響かせていって、知のデータベースとシステムを大きくしていけばいいと思います。上高生のみなさん、本校に在学している間にぜひとも、そういうことも意識して学んでください。