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49 年末の風習について考えてみよう ~仕事納めと年末準備~

本日12月28日は平成30年、2018年の仕事納めです。上高生に日本の伝統文化について知ってほしいことを何回か書いてきましたが、今回は年末の風習について書いてみることにします。(今回も特定の宗教の強調ではなく、民俗学の一環として読んでください。)

日本の風習として、正月に祖先の御魂は我が家で迎えるということでしたから、師走の末の晦日(みそか)、大晦日(おおみそか)に向けてそれなりの準備期間が必要でした。今は門松(かどまつ)も紙制のものを使ったりしますが、昔は竹林に行って先祖を迎えるのにふさわしい立派な竹を選んで切り出し、美しく装飾を施して自分たちで門松を作っていました。祖先の御魂を祖霊(それい)といいますが、祖霊は門松を目印にしてその門から屋内に入るということになります。祖霊が来ている間は分霊されますから、門松も神様として祀られます(キリスト教ではツリーが近いものですね。クリスマスツリーの由来も色々な説がありますが、神木の思想は様々な文化で見られるものです。門松とクリスマスツリーの関係を考えるだけでも、おもしろい比較文化人類学のテーマになります。七夕の飾り笹はどうでしょう。日本では夏には笹に願いを、冬にはツリーに願いを書いて飾ってますよね。)。鏡餅などもそうです。

親族がそろって、できるだけの「おもてなし」を祖霊にする、というのが原則になりますから、準備は大変だったようです。家主にあたる者は精進潔斎をして、水をかぶったり、滝に打たれたりなど、様々な行をしたことでしょう。ちなみに、きれいな水で身体を清めれば、心も清められるというのが基本になります。寺社に参拝した時に手水舎で手と口を清めますが、同時に心まで清めているということを意識するわけです。話を戻すと、食事を作る役割をする者も大変で、神様のもてなしに加えて、集まってくる親族の分も用意しなければなりません。今でもおせち料理を作るのは手間を要しますが、それをはるかに超える量の酒食を用意をすることも多かったでしょう。

それ以外に祖霊を迎える場所を作ったり、というような作業もあり、親族一同が力を合わせてしました。迎えて帰られる祖霊や神が宿った場所はその時期を過ぎれば、片づけました。祠(ほこら)などを作っていた場合は、毎年作ることになります。いちいちえらいことだったでしょうが、そういう作業を一緒にすることを通して、普段は離れ離れになっている親族が力を合わせて、ということは心を合わせて祖霊を迎えたのです。そうして結束を固めたことでしょう。(世の中が能率化されて便利になり、かえってそういうコミュニケーションが薄くなってしまっているのでは、と感じます。現代ではわざわざ親睦をはかるための作業を捻出します。過去の文化について学ぶことは、現代の文化について深く考えるためにも必要だということがわかります。ただし、何でもかんでも昔が良かったという考えも極端にすぎるということになります。)こういう感じですから年末に準備期間が必要だったのは当然だと思います。

年度の切り替えの時ではなく、年の変わり目に仕事納めと仕事始めがあるのは、日本の風習をふまえてのことなのでしょう。

今年いろいろとお世話になった皆様、良い年をお迎えください。上高生のみんな、有意義な冬休み、年末年始を過ごしてください。