7 社会的実力としての「自分を調整する力」

長い連休の前半は天候にあまり恵まれませんでしたが、後半は暑いくらいの好天が続きました。今日から通常の学校生活に戻っています。今回は堺上高校の生徒に向けての文章です。

このブログでも上高生のみんなに社会的な実力を身につけてほしいということを繰り返して述べてきました。今回は「自分を調整する力」について書いてみます。

物事を調整する力が社会生活を送るうえで必要なのは言うまでもありません。たとえば、何かのイベントを行う際に、関係するメンバーの予定を調べて日程を決める時には調整する力が必要になります。料理を作る際に、味の具合を決めるのも調整する力です。そういう中で、私が今回に書こうと思うのは、自分自身を調整する力です。

私たちは様々な理想や規範(お手本)を持っています。一方で、様々な欲求も持っています。たとえば、健康のことを考えて、間食をいっさいしないで、規則正しい食生活を送ることを理想としている。しかし、大好きなスイーツやせんべいを好きなだけ食べたいという欲求も強い。皆さんはこういう場合にどうしますか?「自分」で理想と欲求の間を調整しますよね。周りにおいしそうなおやつがあったり、目についたりするのに、まったく間食をしないというのは病気治療でもないかぎり、現実的ではないでしょう。かと言って、欲求のままにおやつを食べすぎるというのも考えものです。好きなおやつを日にちを決めて食べたり、食べる量を制限したりして、という調整を行います。このように現実に照らし合わせて、調整する「自分」のことを心理学の用語で「自我」と言います。「自我」は理想と欲求を現実的に調整してバランスをとる、つまり統合する働きをするのです。

高すぎる理想やお手本が本人を苦しめてしまうことはよくあることです。誰もが競技で世界一になれるわけではないのに、なれない自分を許せない場合などです。特に、本音では練習などせずに自由奔放に遊びたいと思っている場合、「自分」は両方から引っ張られた状態になり、どうすればよいか、悩んでしまいます。現実的に考えてみれば、自分にとってあまり無理のない範囲で、時には好きな遊びの機会も持ちながら、その競技を続けることが大切です。要は嫌気がささないで、そのことを楽しめる、そのことをしている時間が充実しているということでしょう。上手な選手は試合前などには少々無理をすることはあるけれども、その後などに心身をホッとさせる機会をきちんと設けます。

そういう調整をする力は、社会に出て、どのようなことをするうえでも必要になります。「自分をしっかりと持つ」というのは、安定した調整力を持つ「自我」を形成するということです。まず自分の中身を調整することで、バランスがとれたものの見方ができるようになり、物事を調整する力も育っていくのです。「あの人は自分をしっかりと持っているから、この件を任せても大丈夫だろう」とよく言われますよね。

思春期から青年期にかけては高い理想と強い欲求にはさまれて、自我が不安定になりやすいと言われています。ですから、高校生の時分というのは、課題の多い時期になります。しかし、その試練を乗り越えて、我々は社会に出た時に必要な調整力を身につけていくのだと思います。上高生のみんなには、自分はそういう時期にあり、「自分自身を調整する力を身につける」という課題をもっているのだという自覚をもって、様々なことにチャレンジしてほしいと考えています。

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