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10 上高生のみんな、本を読む力を身につけよう(夏休みシリーズ④)

堺上高生も幼い頃から、本を読みなさい、と言われてきた人が多いと思います。学校の夏休みなどの課題として読書をした人もいるでしょう。今回は読書を話題にして書いてみます。

若者が本を読まない、活字離れがひどくなっているという話題はかなり以前からよく取り上げられています。テレビやスマートフォンなどが無い時代は、暇だから本でも読もうか、ということもあったようです。現代は読書にとってライバルが多い、しかも情報の即効性などの点でかなり読書は不利な状況ですね。「えーと、日本の初代首相は誰やったかな」という時、今ではスマートフォンやパソコンで調べればすぐにわかります。メディアが少なかった時代には、周りに知っている人がいなければ、本で調べていたのです。情報化が進んだおかげで我々の生活はとても便利で快適になったのです。

では、時間と手間のかかる本を読むという行為は時代遅れなのでしょうか。少し考えてみましょう。まず、得たい情報の性質を分ける必要があります。できるだけ早く事実を確認したいような情報に関しては、ネット情報のほうが便利です。しかし、発信元が信用できる、より詳しい内容の情報を知りたい場合や、その事実に関して深く考えるヒントがほしいような場合は、本を読む必要があります。ネットの情報は発信元に信用が置けるどうかの見極めが難しいですが、本の場合はある程度のフィルターがすでにかかっているので比較すると信用できることになります。事実について考えるにあたっても、考えるためのヒントは本のほうが圧倒的に情報量が豊かです。

また、本を読んでじっくりと考えることは、思考力を鍛えるのにとても役立つのはいうまでもありません。コストパフォーマンスのうえでも、自分の考える力を高めるには、読書による鍛錬が一番になると思います(社会的な実力としてものを考える力が非常に大切なのは言うまでもありません)。

自分の経験が浅い分野では、問題を解決して目標をかなえるための方法や手段の数が少なくなります。その数を増やすためには専門家やプロフェッショナルの書いた本を読むのが有効です。また、1学期の始業式の時に、「君たちはどう生きるか」について話をしましたが、ものごとを見る視点や行動の選択肢を増やして、考える力を身につけるには活字の読書が非常に有効です。

マンガでもいいではないか、と思ってしまいますが、たとえば人物の気持ちを表すのに、マンガは主に人間の表情やまわりの状況で表現します。小説では言葉でくわしく書くことができます。まんがの吹き出しなどで何十行も書くことはできませんが、小説や物語ならいくらでも書くことができます。フランスのプルーストという作家はスプーン一杯のマドレーヌの味の思い出をめぐって、文庫本で10冊以上にわたる不滅の小説を書きました。我が国の源氏物語でも情愛をめぐる心理の記述は詳細を極めていて、紫式部の文章力は今でも世界最高峰と言われています。深い思考力の鍛錬という点では、活字を読むに越したことはありません。(ただし、マンガならではの良さもあります。)

上高生のみなさん、自分で考えるため、人の気持ちを理解するためのオプションを増やすつもりで、この夏休みに読書力を身につけてください。このブログでも機会があれば、上高生に読んでほしい本などを紹介するつもりです。