• トップ
  • 2018年
  • 8月
  • 17 言葉と現実とのバランスを見極めて判断する力を身につけよう(夏休みシリーズ⑤)

17 言葉と現実とのバランスを見極めて判断する力を身につけよう(夏休みシリーズ⑤)

言葉というものは自分の気持ちや考えなどを他の人に伝えるものです。また、他の人ではなく、自分自身に語りかけることもあるでしょう。その言葉は特定の状況のなかで使われます。私たちは、その状況をふまえて、使われた言葉の意味を受け取って生活をしています。「アレとって」という言葉はどういう意味で使われているのでしょうか。第一に「アレ」が何をさすのかがわかりません。「とって」にしても、とって渡してほしいのか、それとも捕まえてほしいのか、汚れなどをふきとってほしいのか、わかりませんね。しかし、現実の生活では、「アレとって」と言われただけで新聞をとって渡してあげるというようなことはいくらでもあります(わかっているのに「アレではわからん、ちゃんと言うて」と言うことはありますが)。実際の生活のうえでは状況をふまえないと言葉の意味するところは分からないことが多いのです。

次のような例はどうでしょうか。「宇宙人はウソつきだ、とその宇宙人が言った」。この宇宙人が言っていることはウソでしょうか、本当でしょうか?言葉のうえではウソつきだと言っている本人がウソつきの一員なのです。ウソの反対は本当だから、宇宙人はウソつきではないということになるのでしょうか。これは昔からある言葉の難問なのですが、現実の生活では難問でもありません。現実にそういうことを言う人がいたとしたら「ほんまに宇宙人なんかいるはずないやろ」ということで、まず自称宇宙人を疑ってかかります。次に、私たちは話をしている人の顔の表情や声の調子などから、本当のことを言っているのかどうかを見分けて生きていますから、その人が言っていることがウソか本当かを瞬時に判断しています。

それではこの例ではどうでしょうか。「晴れは良い天気である」「良い天気の時は雨はふらない」したがって「晴れの時は雨はふらない」。推理としはこれは正しいですよね。たしかに私たちはこのように考えながら判断することが多いです。しかし、現実には空は晴れているのに、雨が降っている状態に遭遇することが時々あるのではないでしょうか。にもかかわらず、「天気予報で晴れや言うてたから、傘もってきてへんやん!傘マークなかったで!」と私たちは文句を言ったりしています。

大切なことは、言葉と現実のバランスを見極めて判断するということです。上高生にはその力を身につけて磨いてほしいと思います。生活していくうえでは言葉と現実を切り離したり、そのバランス関係をふまえないで判断してしまうと失敗することが多くなるということです。「現実」と照らし合わせると天気予報も100パーセント正しいとは限らないということです。たとえば、他人から預かった濡らしてはいけないものを持ち運ぶのであれば、天気予報で晴れと言われていても、折りたたみの傘を必ず持たねばなりません。天気予報ならまだしも、あらゆる場合に「絶対に損はさせません」という言葉を文字通りに受け入れてしまったらどうなるでしょうか。

幼い子どもは大人の言葉を文字通りに受け入れます。「言うこと聞かへんかったら、お化けでてくるで」と言われれば、怖がって言うことをききます。高校生にもなると、さすがに使われている言葉がそのまま文字通りではないということが分かっていると思います。ところが、悪質なサイトなどの被害に遭う高校生が後を絶たないのはどうしてなのでしょうか。人間は大人になっても自分の興味や都合に合わせて現実を曲げて判断してしまうからです。それに合わせて言葉を解釈してしまいます。調子のよい言葉に対して、冷静なら「怪しいからやめとこ」ということが、「なんかムシャクシャするし、ひまつぶしに何かおもろいことないかな」という心の状態の時には「ちょっとくらいやったら、やってみたろか」ということになるのです。つまり、言葉と現実のバランスを見極めるためには、自分の心を平静に保つことも必要になるのです。夏休みはまだ続きます。上高生のみんな、調子の良すぎる言葉、甘い誘惑の言葉などにはくれぐれも気をつけてくださいね。

パソコンの設定に関する変更がありますので、この校長ブログも更新しないことが多くなるかもわかりません。暑い日が続きそうですが、読んでいただいている皆さん、お元気でお過ごしください。