天気も良く、少し時間もあったので、隣の駅まで歩いてみることにした。
線路沿いの道を歩いているうちに、そのあたりが小学校2年生まで住んでいた場所だということがわかった。区画整理がされ、当時の建物は残っていない。それでも、不思議なことに、なんとなく、地形の起伏や道の曲がり方を身体が記憶していた。所々で立ち止まり、(あぁ...)ため息とともに遠い昔の記憶が蘇ってくる。
ある冬の雪が積もった朝、母親がこけた長い階段は二つに分かれ、手すりがついている。
あんなに暗くて大きかった「トンネル」も身をかがめないと前に進むことができない。
ところで、ひとつ疑問がうまれた。携帯電話もない時代。帰りの時間が不規則だった母親の帰りをどのように知ったのだろう。そして駅で。どんな景色をみて、なにを思い母を待っていたのだろうか。覚えているのは、母が買ってきてくれた珍しい菓子を頬張りながら、母と手をつないで家に帰ったということ。
校長 片山 造