国語教師として(前編)

 北海道の学校で、国語教師として授業に臨んだ。大阪弁を交えた授業導入の雑談は大ウケ。しかし、授業に入ると...一人また一人寝ていく。あれだけ教材研究をして授業に臨んだのに...。テストの平均は40点台、他のクラスで授業をしている先輩教員とは15点の開きがあった。最初は(なぜこんなこともわからないんだ)と生徒のせいにしていた。そんなある日、あるクラスの授業に行くと、黒板に(次のカタカナ部分を漢字にしなさい。【問題】私たちは先生の授業がユウウツです。)とあった。たまたま知っていたので黒板にさらさら「憂鬱」と書いた。ため息とともに、生徒の一人が花瓶に差していた一輪の花を投げつけてきた。私はすかさず花を口にくわえ「ORE(オーレ)」とポーズを決めてみた。

 そんな私を見かね、職員室で隣に座っていた50代の女の先生が言った。生徒たちは今まで、幾度となく(なぜこんなこともわからないんだ)と言われ続けてきている。(強がっているけど、本当はわかりたいのよ)そう言いながら先生は泣いていた。そんなこともわからないでいた自分に気がつくと同時に自分の無力さを恥じた。

 次の授業で生徒に詫びた。それから、憂鬱(ゆううつ)の対義語は「爽快(そうかい)」と大きく黒板に書いた。(1時間にひとつ賢くなろう!)の授業がここからスタートした。

校長 片山 造

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