枚方支援学校では、キャリア教育の視点を取り入れ、「自分=理解」「つながり=コミュニケーション」「チャレンジ=考動」を日々の実戦で大切にしています。
今回は「つながり=コミュニケーション」の中でも「かかわる力」から「他者を理解する力」と「他者と付き合う力」に着目した取り組みをご紹介します。
中学部一年の私が担任をしているクラスでは、「クラス活動」の時間に「席替え」をしました。中学部一年では、各クラスで席の配置やその決め方もそれぞれで、私が担任をしているクラスでは、本校中学部に入学したばかりで生徒同士の理解に時間がかかることを考慮して、夏休み前までは個々の生徒の事情を配慮しながら担任が必要に応じて席の配置を入れ替えていました。
今回、生徒の「席替えがしたいかなぁ」の何気ないつぶやきを切っ掛けにして、生徒たちで話し合いながら「席替え」を進めていく機会を持つことにしました。生徒たちがどこまでできるのかわかりませんでしたが、司会は生徒たちに任せ、担任は話し合いの流れを見守りながら、ヒントや必要に応じて選択肢を提示する役割を担いました。まず、どんな方法で「席替え」をするかで、あみだクジやクジ引きなどの意見がでたのですが、予想以上にスムーズな話し合いで多数決を取ることになり、一人ひとりに希望の席を聞いて調整していくことに決まりました。そして、担任から、ホワイトボードに座席配置の枠を描くことと生徒の名前が書いたマグネットを使うことを提案し、2×4の座席配置に8人の名前の書いたマグネットを個々の生徒が置いていきました。「ぼくはドアのそばがいいです」、「前は嫌やなぁ」など、はっきりと自己主張する生徒がいたり、教室後方のカーテンを引いて静かに給食を食べるお友だちや、壁に引っ付きたくなるお友だちを思いやる発言があったり・・・。ようやく決まった座席は、「席替え」の前に担任が考えていた最適解に近いものでした。
しかし、どうしても後ろの席に座ると前の席が気になってしまうお友だちや、休みがちなお友だちの席や、落ち着きをなくしてしまったときのお友だちことなどを考えて(このこと自体に気が付いて言葉にできていることが凄いのですが)納得できていない生徒もいました。
そんなとき、「席、まっすぐじゃないとあかん?」と一人の生徒が自分の言葉で話を切り出してくれました。言われた通りに、一つの席を壁にくっつけてしまうと、次々と個々の生徒の希望や条件に応じて、席を(縦横のラインを考慮せず)動かしていきました。縦のスペースが足りなくなると、「他のクラスで見たことがあるから」と、教師用の机と配膳台にしている大きな机の位置も窓際に沿って並べ替えました。
そして、あっという間に、みんなの問題を解決する座席が決まりました。ドアのそばの席、後ろではないが前でもない席、壁に寄り添った席、前にお友だちがいない席、カーテンが近い席、すぐに先生に助けを呼べる席・・・。さも当然のように2×4の座席配置をイメージしていた私の頭の固さを反省しました。「お休みのお友だちが来た時に、この座席を気に入ってくれるといいけど、嫌なようならまた考えよう」という話で、無事にその場にいた誰もがすっきりと納得して「席替え」を終えました。
私たちが思っていた以上に、生徒たちはお互いを理解していて、機会を作ってじっくりと待てば、さらに他者を理解する力が高まることがわかりました。