7 社会に出た時のために現代の国語を学ぶ必要

 先日あるテレビ番組を見ていると、自動車の運転免許の学科試験になかなか合格しないというケースがとりあげられていました。云(うん)十回もトライしているのに、合格基準点に達しないということでした。タレントが一緒に数をこなす勉強をするのですが、はかどらないので、ご本人は泣いてしまう状態でした。結局、放送時までに合格するには至らなかったようです。ご本人は自分は勉強が苦手なのでと言っていました。見ていて、気の毒でもらい泣きしそうになりました。教習所に通い運転免許取得に向けてはそれなりの高額費用がかかるのですが、卒業証明書には有効期間があるので合格できずにそれを過ぎると、それがもう一度教習所通いから費用がかかることになってしまいます。

 現在の免許学科試験はいわゆるひっかけ問題が多く出ているということでした。「ひっかけ」という言葉の語感からして、ひっかけ問題はマイナスイメージが伴います。しかし、問題を作る側からしてみると、正誤問題などの形式で、取り扱われている内容をしっかりと把握しているかどうかをチェックするためには、こういう問題が必要だということになります。

 その典型の最たるものがいわゆる大学入試の国語の共通テスト問題です。思考力を測るには○×問題や選択肢問題ではダメだ、記述式問題でなければ、という意見は根強くあります。それはそうなのですが、国語の記述式問題は採点にも大きな技量が必要で、専門の国語の教員でも時間がとてもかかります。結果を出さねばならない期限がありますから、記述式問題ばかりというわけにはいきません。特に結果発表を急ぐような場合は、記号で解答できる出題が選ばれることになります。記号解答の問題で内容把握がしっかりとできているかどうかをみるには、よく読んで頭の中で内容を具体的にイメージしながらでないと間違ってしまうようなものを作る必要があるということです。

 どういうものであれ、テストには傾向と対策が必要です。とにかく数をこなす作戦という方法もありますが、免許学科の試験のように受験期限が決められている場合などはあまりお勧めできません。出題の傾向を知って、いわゆる「ひっかけ」方のパターンを把握して、自分がひっかかりやすい問題傾向をおさえて、そういう部分に対策の重点を集中して勉強するほうが効率的だということになります。学習認知の専門的には解法の「スキーマ」を身につけるということにもなります。このブログでも何度か言ってきましたが、高校の定期考査でも計画を立てて、対策をして臨むことが大切になります。定期考査はそういう段取りの力を育成するためのものでもあるのですから。

 国語の現代文の勉強なんかなぜ必要なのか、わからないという意見を言う人がいますが、日常会話レベルではおさまらない言葉のやりとりが要る段階では、資格試験からビジネスシーンまで国語のそれなりの能力が求められるのです。試験対策で文章の問題の傾向と対策を立て、どこに重点を置くかということを判断するにも国語力がいるのです。初等教育からはじまる意図的な国語の学びの積み重ねが社会に出た時に必要な国語力の育成には欠かせません。

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