随分と月日が経ってしまいましたが、10/24(木)4時間めに見学した授業の紹介です。2,3年生が選択履修できる学校設定科目「文学講読」、担当は青木先生です。
題材は、津村記久子さんの短編小説集「サキの忘れ物」に収録された「王国」です。この作品は、昨年度から筑摩書房出版教科書「文学国語」に掲載されています。津村さんは本校48期卒業生で、2005年の「太宰治賞」受賞を皮切りに、「野間文芸新人賞(2008)」「咲くやこの花賞(2008)」「芥川龍之介賞(ポトスライムの舟・2009)」「織田作之助賞(2011)」「川端康成文学賞(2013)」「芸術選奨新人賞(2016)」「谷崎潤一郎(2023)」と多くの文学賞を受賞され、現代文学を代表する作家の1人として大いに活躍されています。
現役の今高生が、同じ学び舎で育った30年ほど先輩の小説を授業で読むことができる、こんなことは簡単にできる体験ではないでしょう。この生徒たちの中から、町田康さん、津村記久子さんに続く本校3人めの芥川賞作家が現われるのを楽しみにしています。
「王国」は幼稚園児のソノミが主人公。日常とは異なる自分だけの世界を大切にする園児、怪我をして黄色い薬とガーゼを装った膝は自分にとっての「王国」であり、「王国」をもつ人間に昇格したという誇らしさは同輩には理解されなくても、ソノミの中にはそれをリスペクトしてくれるデリラがいる。
やがて、「隣のクラスの女の子」に心を許していく経過を、読者がどのように受け止めるのか、この短編のクライマックスはそこにあるように思いました。生徒たちもそれぞれにいろいろと思いを巡らせていました。文学を読むことは、人として大切な営みの1つだと感じる授業でした。有難うございました。