アイデンティティの確立をめざせ! 第80回入学式挙行

 昨日(4月7日)、第80回入学式を挙行しました。開始時刻の随分前から登校し、入学式の看板の前で記念撮影をする姿も散見されました。開式を待っていただいている様子です。

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 今年の入学式の式辞では、エリクソンのライフサイクル論の話をしました。ちょっと長いですが、興味のある方は読んでみてください。

 新入生のみなさん、入学おめでとうございます。保護者の皆様方、お子様のご入学、誠におめでとうございます。本日は、三丘同窓会・後援会会長様とPTA会長様のご臨席をいただいております。心より御礼申しあげます。

 三国丘高校への入学にあたって、校長として伝えておかなければいけないことがひとつだけあります。それは、今日から始まる3年間で何をすれば良いかということです。みなさんの多くは、高校に入学して、ほっと一息ついていると思います。それは悪いことではありません。しかし、その一方で、この3年間は、みなさんの人生にとって、とてつもなく重要な時間です。この時期に達成すべきことをクリアした人とできなかった人の差は、埋めようのない大きな溝になる可能性があります。

 実は、このことを明確に説明している人がいます。1950年代のアメリカで活躍した心理学者エリクソンです。彼が関わった患者は、他の精神科医たちが治療をあきらめるような極めて厳しい状況の患者ばかりでしたが、彼の治療により見る見るうちに回復していきました。その彼が、自身の治療法の根拠となる理論として公表したのが「ライフサイクル論」です。人は一生発達し続けるとしたこの理論では、生涯を8つの時期に分け、それぞれの時期に乗り越えるべき課題を明らかにしています。人は、これらの課題をクリアしたときに成長し、次のステージに進むという考え方です。

例えば、ちょうど小学生の時期にあたる学童期なら、学校や地域の人間関係の中で、勤勉性と劣等感の間で心が揺れ動き、劣等感を感じつつも勤勉性で幾つもの障壁を乗り越えることで、自身に対する有能感が得られるという具合です。

 では、みなさんが属する青年期の課題は何か...というと、アイデンティティの確立です。アイデンティティというのは「自分らしさ」のことです。仲間と切磋琢磨し、めざすべきロールモデルに出会い「自分らしさ」を見つけることによって、自分自身を信じる心を得ることができるというストーリーです。ライフサイクル論では、それぞれの時期の課題をクリアできなかった場合、その段階にとどまり、後に問題が生じることがあると言われています。

 みなさん、もうわかったと思います。三国丘高校で過ごす1秒1秒は、すべて、アイデンティティを確立するための時間です。3年間という限られた時間で「自分らしさ」を見つけるためには、どんなことにも貪欲に挑戦する意識が必要です。アイデンティティの確立とは、「自分らしい生き方とは何か」を真剣に考え、「自分らしい自分」になるための一歩を踏み出すことです。そこまでできなければ、アイデンティティを確立したことにはなりません。

三国丘高校で、卒業と同時に一歩を踏み出すと言えば大学受験です。高い志を叶え「自分らしい自分」になるためには、今から準備しなければ間に合いません。高校入学と同時に計画的に学習することが必須条件です。三国丘高校では、勉強するのが当たり前です。

 また、仲間とともにそれぞれの目標に向けて頑張る経験は、アイデンティティを確立するために不可欠です。みなさんの周りにいる同級生はライバルではなく同志です。勿論ですが、勉強だけしていてもアイデンティティは育ちません。部活動や探究活動、学校行事、更には、海外研修を含む各種の研修に意欲的に取り組むことにより、目標とすべきロールモデルを見つけることができます。先輩でも同級生でも先生でも良いのです、ロールモデルが見つかれば「自分らしい自分」に近づくことができます。三国丘高校の部活動入部率は102%。三国丘高校では、部活動をすることも当たり前と言えます。本校は、GⅬHS10校が対象の合同発表会で大阪大学賞を2年連続で受賞するなど探究活動でも毎年多くの成果を出しています。これらの成果が評価されて、志望する大学に進む生徒も毎年出ています。与えられた学習ではなく、探究活動に真剣に取り組むことも「自分らしさ」を見つける助けになります。

 NASA研修やオーストラリア研修、フィリピン研修などの海外研修のことはみなさんもご存じかと思いますが、各界をリードする研究者等を招いて開催する三丘セミナーも、みなさんが自らの将来像を描き「自分らしく生きるとはどういうことか」という問の答えに近づくための具体的なヒントを与えてくれます。

 私は、どんなことにも貪欲に挑戦してほしいと言いましたが、それを実践したら何が起こるか...それは失敗です。エリクソンは青年期の特性をモラトリアムという言葉で表しました。モラトリアムとは、社会によって失敗が受容される時間という意味です。勿論、法を犯しても許されるという意味ではありませんが、社会人のように、常に組織への貢献を要求されることはありません。モラトリアムという特権を与えられたみなさんは、失敗を恐れる必要がないのです。

 失敗は勲章です。何もしなければ何も得られませんが、失敗は大事なことをたくさん教えてくれます。三国丘高校には、みなさんの失敗を支える体制があります。 みなさんが、この3年間で何をすればよいか、もうわかってくれたと思います。失敗を恐れず、一秒一秒を大切にして自らの「アイデンティティを確立してください。

 この式辞の中で私は、みなさんに多くのことを求めましたので、私もみなさんに、ひとつの約束をしたいと思います。今日から、みなさんを我が子だと思うことにします。

 かわいい我が子なので、甘やかすことがあるかもしれませんが、大事な場面では迷わず苦言も呈します。どんな時も、先生方と一緒に、真正面から向き合っていきたいと思っています。まさにそれが、130年の歴史を誇る三国丘高校が守り抜いてきた伝統です。

 最後になりましたが、保護者のみなさんにお願いです。この子たちがどんな成長を見せてくれるのか、微笑みながら見守ってください。親として忸怩(じくじ)たる思いに苛(さいな)まれることもあるでしょうが、ここにもう一人の親がいるのですから、私たちと一緒に子どもたちを支えていきましょう。3年後の3月、80期生が全員、将来に繋がるアイデンティティを確立していることを信じて、式辞とします。

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 今年の入学式の見どころは、何といっても校歌の紹介でした。例年は音源を流して紹介しているのですが、今回は有志生徒によるアカペラでした。実は、かつて音楽部があった頃は音楽部の生徒がこの役を担ってくれていたそうですが、部員数不足で廃部になってから長らくの間歌唱での披露はできずにいました。新入生や保護者も聴き入ってくれていました。

 式の後は、私から、担任の先生方の紹介です。この学年は、ベテラン教員と若手教員のバランスがとても良い学年だと思っています。一番下の写真は学年主任ですが、前例がないくらい若い学年主任です。若いですが、この先生は、進路指導主事として学校の中核を担ったこともある人材で、多くの教職員の人望を集めています。同日(7日)には学年通信「十駕JUGA」創刊号も発行され、理想的なスタートをきったと感じています。式辞でも語ったように、3年後の80期生が、それぞれのアイデンティティを確立することを祈っています。

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