このブログを読んでいただいている大人のみなさん...高校時代にきいた校長先生のお話を1つでも覚えている人はいますか?実は、私は1つだけ覚えているんです。
その話というのは、チャールズ・チャップリンの名言です。チャップリンが亡くなったのは1977年のクリスマスで、私が高校に入学したのは1976年の春ですので、私がこの話を聴いたのは、チャップリンの最晩年ということになります。ある日、チャップリンが記者から「あなたの最高傑作はどの作品ですか?」と訊かれたとき、彼は「Next one」と答えたという話です。記者は、チャップリンの年齢から、彼の人生がこの先そう長くないことを知っていたと思います。その上で彼が選ぶ自身の最高傑作をきいておこうと思ったのでしょう。しかし、以外にも彼の答えは「Next one」でした。
この話を聴いたとき、衝撃が走りました。人生の最後の最後まで前を向いている人がいるんだと思うだけで、自分には到底至ることができない境地があるんだと悟りました。だから、自分はどう生きたい...とか、人生に活かしたいとか、そんな難しいことなんて思い浮かべることもありませんでした。けど、不思議なことに、たった一度聴いただけのこの話が今も頭から離れません。
50歳で校長になって、もう10年以上になりますが、生徒たちの前で話をするとき今も思うのは、ひとりでも良いから覚えていてくれるような話をしたいということです。今日も、そんな思いで壇上に立ちました。「アンパンマンのマーチ」も、自分では結構上手に歌えたと思っています。(笑)
今日は、いきなりですが、歌いたいと思います。みんなも知っている歌なので、良かったら一緒に歌ってください。
何のために 生まれて 何をして 生きるのか
答えられないなんて そんなのは いやだ!
今を生きる ことで 熱い こころ 燃える
だから 君は いくんだ ほほえんで
そうだ うれしいんだ 生きる よろこび
たとえ 胸の傷が痛んでも
だけど、これだけで一生涯頑張れるか?と思った時疑問がひとつ湧きました。人が喜ぶのは嬉しいだろうけど、それだけで満足だろうか?人が喜んだ結果、自分は人の役に立ったんだと思うからこそ、心の底から嬉しいと思えるんじゃないか?そう考えました。例えば、漫才師は、人が「面白い!」と言ってよろこぶ顔を見て、少しの時間でも自分の芸が人を幸せな気分にさせた、即ち人の役に立てたと思えて嬉しい。となるし、科学者は、人が「凄い!」と言ってよろこぶ様子を見て、いつかこの発見が人の寿命を延ばす、即ち人の役に立てると思えて嬉しい。となります。
ここで、1年生のみなさん、思い出してほしいことがあります。入学式で、私が言ったことです。2、3年生のために短く要約します。
心理学者エリクソンは、人生を8つの時期にわけ、人間はみんな、それぞれの時期に応じた発達課題をクリアすることによって成長すると言いました。これを、ライフサイクル論と言います。このライフサイクル論で、高校生を含む時期である青年期の発達課題は"アイデンティティの確立とされています。アイデンティティとは「自分らしさ」のことです。
これと、今日の やなせたかし さんの話を合わせて考えると、人を喜ばせ、そのことが誰かの役に立っている(又はこれから先いつか役立つ)と思うためにどんな方法をとるのが一番自分らしいかという問の答えを見つけることが「アイデンティティの確立」だと思えませんか?一番自分らしい方法が「漫才」だとすると、漫才師になると心に決めることが「アイデンティティの確立」だし、一番自分らしい方法が「研究」だとすると、科学者になると心に決めることが「アイデンティティの確立」だということになります。
みなさんが卒業するまでに、自分自身に提出しなければいけない発達課題は「アイデンティティの確立」即ち「一番自分らしく人の役に立つ方法」を見つけることだということになります。そのためには、学力をつけることは勿論、部活動や探究活動などすべてのことに前向きにチャレンジすることが不可欠です。
令和7年度は、失敗を恐れることを禁止します。
失敗しない人より、何度も立ちあがる人の方がずっとカッコいいに決まっています。みなさんのカッコいいところをたくさん見ることができる1年間になることを祈念して、年度当初の挨拶とします。
下の写真は、始業式に続いて行われた対面式の様子です。生徒会執行部が司会をして、新入生の代表が、2年生と3年生に向けて挨拶をしました。初々しくもしっかりした口調での挨拶が三丘生らしくて、とても好感が持てました。