44 記録的な暑さの8月に ~個性について~

 暑さの一番のピークは過ぎたということですが、今日も非常に暑いです。コロナ感染症でもピークのことにふれられることがありますが、油断につながらないようにしなければなりません。感染症第一波が終息したという雰囲気の中での緩和ムードがやはり今のこの状況につながっています。専門家は警鐘を鳴らし続けていたのにもかかわらず、大阪地域の抑え込みをマスコミが持ち上げたこともあって、それっとばかりに緊張感を緩めてしまいました。この猛暑に関しても、増える疲労の蓄積と併走状態になりますから、当面は対策をしつづけることが必要です。このままでいくと、観測史上もっとも気温の高い8月になる可能性があるということです。

 さて、あるテレビドラマのヒットのことが話題になっています。相変わらず要因の分析論議などが盛んです。高校生でも見ている人はいるでしょう。西高生には「個性」というものをどうとらえるかを考えてほしいので、少し違う角度から「演出」について書いてみます。演出の要素はさまざまですが、どういう俳優を起用するか、という点で考えてみます。注目が集まるのは主演俳優を誰が務めるか、その役柄があっているかどうか、ということです。しかし、ここでは脇役について考えてみましょう。脇役でも、ああこの人はこの役にぴったりということがあります。反対に、「ええ、この人が大学教授するの?」「ちょっと政治家という雰囲気と違うなあ」というふうに、そぐわない感じがすることもあります。その両方にあてはまらないケースがあるのですが、わかるでしょうか(厳密にいうと、後者に入るのかもしれませんが)。どういう役をしても、いつもほとんど同じ雰囲気やしゃべり方をする俳優のことです。演技もとびぬけて上手という感じでもありません。

 ドラマでもエンタテイメント的なものであれば、どちらかというと主役脇役ともにイメージぴったりのもののほうが評判はいいようです。正義と悪がはっきりと分かれていて、勧善懲悪のパターンにはまっている。出てくる男女のイメージも男性は強くてたくましく、女性はおしとやかで優しくてというパターン化が多いと思います。現在放映中の視聴率の高い例の現代ドラマをとりあげて、女性の描かれ方が型にはまっているという批判をいくつか目にしましたが、型にはまっているのは女性だけではなく、ドラマ全体が型にはまったエンタテイメントなのです。視聴者はスカッとした面白さやワクワク感などを求めているのであって、現代社会の課題をリアリスティックに追及してほしいと思っているわけではないでしょう。

 そうではなくて、リアリティを持たせて現代の日常のあり方を描いたドラマでは、逆に型にはまりきった演出ではおもしろくありません。我々の現実生活では物事は筋書き通りに進みませんし、必ずしも正義が勝って、悪が懲らしめられるわけではないし、その職業についている人でも、型にはまっている人のほうが少ない感じがします。ですから、俳優の起用でも型にはまりすぎないようにしていると推測します。私が言う、どんなドラマに出る時もほとんど同じ雰囲気の俳優は、こういうドラマでこそ活きると思うのです(もちろん、パターン化されたエンタテイメント的ドラマでもこのタイプの人は薬味のようにピリッとした味を出したりするのですが)。見ている者は、「ああまたこの人かいな」と思うのですが、でもたしかにこういうタイプの人が自分のまわりにいて、独特の雰囲気を醸し出していると感じるのではありませんか。優れたプロデューサーや演出家はそういうことを計算して、それらの俳優を起用していると思います。リアリスティックなドラマにそういう違和の要素をあえて入れることでよりリアリティが増す。本人自身はワンパターンの権化のようなのだが、ドラマ全体でみるとパターンにはまるのを防ぐ役割になっている。

 現代はこれだけ複雑になっているのに、いや複雑だからこそかもしれませんが、物の見方が単純化されて、様式や公式の持つ力が増している気がします。ドラマの脇役として、あえて我が道をいく個性的な俳優を「演出」として起用するということは、さりげなく本物の個性というものが帯びる凄みを我々に思い出させてくれているのかもしれませんね。個性的であることと、わがまま勝手であることは違う。自分も活かして、周りにもすぐれた個の存在の貴重さを感じさせる人が個性的と呼ばれるのにふさわしいと私は思います。

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