57 図書委員のインタビューを受けて

 先日、本校図書委員の代表者生徒2名が校長室に訪ねてきました。記事を掲載するためのインタビューです。図書委員会ということで、読書についての質問ばかりと思っていたのですが、生き方論や世界観、勉学の意義、趣味の話など、話題が多岐に展開して、充実した会話になり、1時間以上になりました。

 良かったのは、きちんと訊くべきことは訊いたうえで、私の話に真剣に向き合い、興味関心を持って傾聴していたことです。インタビューはともすると、決められた質問内容があり、それを対象者に伝えて、その回答をたんたんと聴く、ということに終始しがちです。ふだんの会話でも、聞き手が自分の言うことにちゃんと傾聴の姿勢をとっているかどうかで、話すほうも話の内容を加減しています。この人は相づちを打っているけれども、心はうわの空で聞いているな、と思うとこちらもまじめに話すことをやめてしまいますね。

 かといって、自分がおもしろい、訊きたいと思うことばかりを尋ねていては、インタビューは成立しません。趣旨や意図を伝えて、テーマに沿った質問内容を事前に用意しておくことは必須です。私の話にも熱がこもったのは、聞き手の二人がその兼ね合いのところをうまく塩梅(あんばい)していたからだと思います。

 大阪は「しゃべくり文化」の地だと言われています。会話にかけてはとても堪能な「県民性(府民性)」を持っていると思われています。テレビなどでも、「大阪の人は素人でも漫才師みたいにおもしろい会話をする」というようなことがよく言われています。しかし、最近思うのは本当にそうだろうか、ということです。話すほうはまだしも、聞くほうはどうか。自分の言いたいことだけを話すだけで、相手の言うことにきちんと耳を傾ける人が少なくなっているのではないか、と感じるのです。

 漫才には台本があるので、「ツッコミ」も決められたタイミングで入れればいいのですが、ふだんの会話で「ツッコミ」を駆使しようとすれば、相手の話の内容をよく聞いていないとできません。しかも、機知が効いていないとだめです。単に相手を非難する言葉やののしる言葉は「ツッコミ」ではありません。テレビで単に大きな声を出して、他の出演者の言うことを罵倒して笑いをとろうとしているのを見かけますが、あまり気持ちのいいものではありませんね。この点で誤解している人が多いのではないでしょうか。

 要は互いに気持ちよく言葉のやりとりを進めるための薬味が「ツッコミ」のはずです。会話が平たんになり、つまらなくなってきた時に、話すほうが意図的にとぼけたことを言う。それに対して、間髪を入れずに「ツッコミ」を入れる。そうすることで、笑って、会話がリフレッシュされる。私が幼い頃は、たしかに周りにもそういう点で会話の達者な年輩の方たちがたくさんいたような気がします。

 新しい教育改革では、国語の授業で「話す・聞く」能力の習得への比重が増しています。残念ながら、日本語の「話す・聞く」レベルが低下していることの反映の結果だという面はあるでしょう。私の勉強不足もあって、「話す・聞く」学校教育の定番、決定打というものを知りません。そのぶん、これからいっそう研究実践が積み重ねられていくのでしょうが、そこにはコミュニケーションのポイントとの兼ね合いも忘れられてはならないと思います。

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