54 定期考査の勉強と段取りをする力

 1、2年生の学年末考査が1週間後に控えています。本校の生徒の様子を見たり、教員から話を聞いたりしたところでは、残念ながら計画的に定期考査に臨む勉強をしているケースが少ないようです。何をどうしたらいいかわからない、という意見をよく聞きます。①日程と実施教科の確認②範囲の確認③勉強の素材がそろっているかの確認④計画⑤計画に沿っての勉強、というのが基本です。これは将来的に働くようになった時に仕事の段取りをするのとほぼ同じ順番になります。

 なかなかイメージがわかない場合は、料理で考えてみましょう。料理を作るときに行き当たりばったりで、「いきなりたこ焼きを作るぞ」といって取り掛かる人がいれば、「おいおいちょっと待って、すぐにできるんかいな」と言うと思います。しかし、勉強に関しては、それと同じような行動を思いついたようにとる人が多いのではないでしょうか。

 上の順番を見ればわかるように、①から③まではまず確認です。料理で考えてみると、①いつの何時までにどういう名前の料理をつくるのかを確認(今日の夕飯はたこ焼きにする)②それぞれの料理はどの程度の内容にするのかの確認(冷凍食品ではなく、できるだけ手作りをめざす)③冷蔵庫の中などを調べて、必要な素材がそろっているかをチェックして、無いものは買い足す(たこ焼き粉は前の分でいけるが、タコとねぎなどは冷凍しているものもないから買い物が必要)④レシピを考える(ネット動画にいつもとは違うたこ焼きのレシピがあったので、それに自分なりの工夫を加えて作ろう)⑤実際に調理にかかる(家族で役割分担してたこ焼きを焼く)、ということになります。

 定期考査の勉強でもまず①から③の工程をきちんとしておくことが実は大切になります。たとえば、範囲のプリントはすべてそろっているかを確認しないと、前日の勉強で一枚大切なプリントが欠けているということわかったという事態を招きます。これが請け負っている仕事だったとすればどうでしょう。納期期限に間に合わないということになってしまいますね。段取りをする力も試行錯誤や練習をしないと身につかないものです。小学校からつづく学校のなかでの教育活動には、まだ強い利害が生じない場面でその力を身につけていくという意義もあるのです。ですから、周りがあまりにもお膳立てをしすぎることはいかがなものか、ということになります。

 子どもがしている様子はまごまごしているし、危なっかしいから見ていられない、それに大人がしたほうが早いし、きれいだから、ということで大人がしてしまうと、その子どもが失敗しながらでも新しい技能を身につけていくことができなくなります。この点は、(私の自省も込めて、)せっかちな性格の大人は気をつける必要があります。民俗学の本を読んでいると、この種の社会教育のあり方という点では日本社会は後退していると私は思います。近い立場の大人などはどうしても過保護的になってしまうので、そうなるのを自ずと防ぐような機能が地域社会や教育機関にあったようです。子どもたちを大切にしながら、その子どもが将来的に自律して社会的な力を身につけるためには、どのような新しい方向性を見いだしていくべきか。現代日本の課題の一つだと思います。

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