56 「学び」の時代

 今年度もあと数日を残すところとなりました。栂・美木多駅から本校まで続く緑道の桜にも花が開き始めている木が見受けられるようになっています。来週から再来週にかけてが見ごろになるのでしょうか。今年は梅の開花が遅かったので、梅桜があまり期間をおかずに咲くという年になりそうです。数字によるカレンダーなどがない時には日本人は自然の姿の移り変わりで季節を察知していたはずです。本居宣長は「暦(こよみ)」は「きよみ」すなわち「季」を読むことだと述べていたと思います。我々の遠い先祖たちは「ああ、またこの木に美しい花が咲いた。またあの人たちが訪ねて来るにちがいない。」などと思いをめぐらせていたことでしょう。

 コロナ禍、軍事侵攻、大地震などを受けて、世相はいっこうに落ち着かずに社会全体が浮足立って前のめりになっているような状態が続いていますが、美しい花に季節の推移を感じとるような感覚は日常の中で何とか保ちたいものです。

 高校生にとっては長い春休みが続いていますが、西高生の皆さんは元気に日々を過ごしていることと思います。3学期終業式で自分を向上させるようなことに取り組んでほしいというメッセージを伝えました。日本の社会は「工業社会」から「情報社会」になり、これからは「超スマート社会」になると言われています。それを「Society5.0」といいます。それにあわせて、学校も「「勉強」の時代」から「「学習」の時代」になり、いずれは「「学び」の時代」すなわち「学校ver.3.0」と呼ばれる段階になるとされています。「勉強」には他者から強いられる感じがつきまといますが、「学び」は自らすすんで取り組むという感じが強くなります。学習者に求められるのは自分から能動的になって、自分にふさわしい学びの「デザイン」を見つけていく姿勢です。そのような学び手のことを「アクティブ・ラーナー」と呼びます。

 そういうあり方はいずれやってくる未来ではなく、実は今のこの時代にも求められるものではないでしょうか。積極的に学ぶ喜びとそれに伴う自己の成長の尊さはすでにソクラテスや孔子の言葉の中で輝いているのです。今、自分が置かれた状況の中で、自己をどのようにして向上させていくのかを自ら「デザイン」して、創造的に自分の生き方を「プロデュース」していく。一冊の本との出会いが一生を左右することもありますし、部活のある試合の思い出がその後の競技人生にずっと影響していくこともあります。こういう時代だからこそ、高校生には失敗や苦労にめげずに学びの姿勢をもってほしいと考えています。

 冒頭にもどりますが、宣長も言うとおり、その学びの意欲を生むのは豊かな感性です。「もののあはれを知る心」です。西高生のみなさんも本校近辺でこれから咲き誇る美しい桜を大いに楽しんでください。

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