1学期終業式校長あいさつ

今日で、1学期が終わりました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの制限がかかるなか、それぞれが、不安とストレスを抱えながら過ごした、4カ月であったと思います。ウイルスの正体がまだ完全には解明されず、有効かつ実用的なワクチンも開発されていない今の段階では、感染のリスクをゼロにすることは極めて困難です。

『誰が感染しても不思議ではない』という状態は、今後、しばらくの間続くでしょう。

とにかく今、私たちができることは、ひとり一人が、マスクの着用や手洗いといった基本的なことを粘り強くおこない続けることです。

その積み重ねが、結果的には、多くの人の命を救うことにつながるとともに、

収入が減り生活が苦しくなっている方や、寝る間もないほど過重な労働をしている医療関係者など、多くの人を助けることになることを忘れてはなりません。

 同時に、生徒の皆さんには、このような緊急事態の中においても、自己実現に向けて、「学び」を継続し、将来に必要な学力をしっかりとつけるとともに、人として立派に成長して欲しいと願っています。

 特に、3年生にとっては、大切な時期を迎えます。大学説明会をはじめ、さまざまな制限がある中において、例年よりも「主体的な進路選択」や「進路実現に向けた強い意志」が求められることとなりますが、ぜひ、自分自身の力を信じて切り拓いていって欲しいと思います。

 さて、今日は、皆さんに、緊急事態の中であるからこそ伝えたいことがあります。まずは、ある世界的に有名な感染症学の先生の言葉を紹介します。

「感染症は多くの人に広がることが恐ろしい。しかしもっと恐ろしいのは病気に対する人々の差別と偏見である。」

私たちは、この言葉を深く受け止める必要があります。

過去、感染症は、人権を無視した差別を生み出しました。例えば、ハンセン病に対する隔離政策。そして、近年ではエイズに対する就職差別。

さらに感染症だけではなく病気ということで言えば、水俣病の患者に対する差別が、水俣出身の子どもたちにも及びました。

つまり、病気で苦しんでいる人に対して、いたわるどころか、さらに攻撃をし、

心までも痛めつけるということを繰り返してきたのです。

残念ながら今回のコロナウイルスにおいても、少なからず、差別や偏見といったことが起こっています。先日、岩手県で初めて感染された方の会社を公表したところ、「会社を首にしろ。」といった誹謗中傷のメールが100件以上殺到したといいます。

患者に対する差別、偏見。さらに、感染の恐怖のなか、治療のために一生懸命働き続ける医療従事者やその家族までが、まるで「ウイルス」のように扱われ、差別されるということもおきています。私たちが戦うのは「ウイルス」であり、「感染した人」ではありません。望んで感染する人は一人もいません。感染者もウイルスの被害者です。

長期間、危機と不安の中に立たされ、皆、多くのストレスを抱えています。

このような時であるからこそ、本当の意味での人間性が試されているのかも知れません。ぜひ、全ての生徒が安心して過ごせる桜塚高校であってください。

人への思いやりという事では、マスクの着用についても同様です。

新型コロナの感染者には症状が出ない場合があり、特に若い人は無症状か軽症のケースが多くなっています。だからこそ「自分は感染しているかもわからない」という、最悪を想定した行動を取ることが、とても大きな意味を持ちます。

80歳以上の高齢者や持病のある方の致死率は1割を超えると言われています。そのような方や家族にとっては、感染が、即、命にかかわる大変な問題です。

皆さんが生活する様々な場所、また、教室にも「家族にそのような人がいる」友達や先生がいることを想像し、思いやりのある行動を取るようにしてください。

また、日々暑くなってくる環境の中において、熱中症の予防も大切です。

マスクを外すタイミングを判断する、そして、マスクを外した時の行動をコントロールすることが必要です。

言うまでもなく、マスクをする目的は「飛沫感染を防ぐため」です。それを

しっかりと理解していれば、「着用する時としなくても大丈夫な時」の判断ができます。そして、マスクを外した時の行動もコントロールできるはずです。

ぜひ、自分と周りを大切にした行動を心掛けてください。

それでは、しばらくの間休みになります。規則正しい生活を心掛けるとともに、安全で有意義な日々を送ってください。