本日、1学期の終業式を放送で行いました。
校長挨拶は以下の通りです。
今日で1学期が終わりました。
相変わらずコロナによる様々な制限があり、十分なことができないストレスや不安を抱えながらの3カ月であったと思います。
しかし、そんな状況の中でも、皆さんは工夫を重ね、今、できる範囲で、精一杯の力を発揮してくれました。中でも6月17日におこなった「応援パフォーマンス大会」は、練習時間や練習方法が制限されている中で、仲間と力を合わせ、作りあげた素晴らしい内容でした。改めて74期生のパワーを実感しました。
団長、副団長を中心に、「衣装」や「形式」など、自分たちの「思い」や「考え」を伝え、「感染防止」とのバランスを考えながら、全員たちで決めたルールを守り、成功に導いたことは、本当に素晴らしいことです。
また、一生懸命、準備や運営に関わった自治会の活躍も、行事を成功へと導いた大きな要因だったと思います。自治会役員の皆さんは、この1学期、行事の運営はもちろんのこと、昼休みの放送や「さくらんぼ新聞」の発行なども含め、生徒の活動をリード、そしてサポートしてくれました。秋には、文化祭が控えていますが、引き続きよろしくお願いします。
さて、今週の金曜日、いよいよオリンピックが開幕します。57年ぶりの東京開催です。コロナ禍における開催と言うことで、私自身、楽しみでもあり、
不安もあるのが正直なところです。世間においても、開催することの賛否、
また、開催方法においても様々な意見があります。
「選手のため」、そして「社会の活性化」のために実施すべきだという意見、
逆に、感染のリスクや、オリンピックの開催をきっかけにして、感染拡大が起こった際のことを考えれば、やるべきではないという意見など、考えは大きく分かれています。
このように、この1年半ほどに渡る、新型コロナウイルスの感染は、人々の考え方や行動、さらにその背景となる生活環境などが多種多様であることを、
改めて浮き彫りにしました。
同時に、そのような様々な考えを持つ人たちが、共に社会生活を送るためには、それぞれを理解することが、どれだけ大切であるかということも実感しました。
感染症に関わっては、この間、陽性者や家族、さらには医療従事者までも、
あらぬ「詮索」や「誹謗中傷」などの被害に巻き込まれたケースがありました。
また、現在はワクチン接種についても「接種をするか、しないか」という判断において、自分の考えを押し付けたり、自分と違う考えの人を攻撃するといったことが起こっています。
今一度、「人それぞれは生まれながらにして持つ権利が尊重される」という、「基本的人権の尊重」の原理に基づいて、「誰もが安心して、自分の考えをもとに行動ができる社会」であることを心から願います。
話は変わりますが、近年、これからの社会を生き抜いていくための大切な力として、「主体性」という言葉を良く聞きます。例えば、学校の授業においても、先生が説明をするだけでなく、生徒が「主体的」に学習をする授業展開が大切であるとされています。また、企業が求める社員の資質においても、「主体的な力」の順位が高くなっています。
それでは、この「主体性」とはどのような力のことを言うのでしょうか?
似ている言葉に「積極性」や「自主性」があります。しかし、この2つの力と「主体性」には根本的な違いがあります。
積極性とは、物事を進んで行うこと、自主性とは、誰かに言われる前にすることを言うのですが、どちらも、もともとやるべき内容が決まっています。
つまり、「積極性」や「自主性」は決められたことを、こなす力です。
しかし、主体性は「状況に応じて自分がやるべきことを考え、行動する力」、
つまり、「やる内容も含めて、自分で進めていく力」です。
わかり易く言うと、積極性や自主性は、「言われたことを率先して行動する力」、
であるのに比べ、主体性は、「言われていないことでも自分で考えて行動する力」と言えます。
そもそも、行動は、自分が主であるか、周りが主であるかで大きく違います。
例えば、「美味しいものを食べたい」というのと「美味しく、ものを食べたい」というのは、一文字違うだけですが、行動は全く異なります。
「美味しいものを食べたい」という考えは、作り手や食材に頼る部分が大きく、どちらかと言えば、受け身です。高級レストランに行って、有名シェフに、高価な食材で料理してもらえば美味しいものを食べることができます。
ところが、「美味しくものを食べる」ためには、自らが行動しなければなりません。
例えば「同じ食べ物」であっても、それがたとえ「おにぎり一つ」であっても、自然豊かな、景色の良いところで、仲の良い友達と食べると、美味しく感じます。
逆に、どれだけ高価な食べ物であっても、食べる場所や環境、一緒にいる人によっては、美味しく食べることができません。
新型コロナ感染症が、皆さんの高校生活に、計り知れない変化、制限をもたらしたことは、残念でなりません。しかし、その中で、皆さんは、「行事」や「部活動」など、限られた環境の中でどうすればできるのかという工夫を重ねながら、高校生活を送っています。
この、工夫こそがまさに「主体性」であり、これからの人生に必要な力です。
今、緊急事態において皆さんが、自分のため、周りのために、最善の行動を自分で判断し、実践をしている経験は、おそらくコロナが終息した後も、社会を生きていくために必要な力となるはずです。
終息まであと少し、時間がかかるかもわかりませんが、「できない」とか「無理」と言ったマイナス思考ではなく、「これならできる」、「こういう風にしてみよう」と言ったように、自分のベクトルを前に向けるように心掛けてください。そうすれば、今この状況の中においても、できることが必ず見えてくるはずです。
それでは、今日から長い休みに入ります。まずは、規則正しい生活を心掛けてください。
また、現在、感染拡大の兆候が見られ、引き続き、注意が必要です。
くれぐれも、安全・健康に留意した行動を取るようにしてください。
2学期、さらに成長した皆さんと会えることを楽しみにしています。