本日、無事卒業式を挙行しました。
今年の卒業生は、3年間、コロナと共に高校生活を送ることになった学年。
本当に厳しい高校生活を乗り越えた347名です
中には、中学校の卒業式が行えなかった生徒もいます。
大変だった高校生活を乗り越えながら、生徒たちは本当に成長してくれました。
いつもとは異なる形での式にはなりましたが、マスクを外した顔を初めて見ることもできました。
壇上から卒業生の姿を見ていると、胸が熱くなりました。
大変だった3年間、本当に良く頑張りましたね。
「卒業、おめでとうございます」
<以下、私からのはなむけの言葉です>
ただ今、三百四十七名に卒業証書を授与いたしました。まずは卒業生の皆さん、
卒業おめでとうございます。本来であれば、この場にご来賓の方々が列席され、式に花を添えるところですが、感染防止のため、制限の中でおこなう卒業式と
なりました。例年とは異なる形ではありますが、心を込めて皆さんの卒業を祝い、未来にエールを送りたいと思います。
また、家族の皆様におかれましては、ある時は厳しく、
そして、ある時は暖かく接しながら、ともに歩まれた日々であったかと存じます。特に、この三年間は感染症による不安や、
様々な制限のなかで一生懸命に高校生活を送っている、お子様に対する寄り添いは、相当なものであったと推察します。
本日、新たな旅立ちを迎えた卒業生たちはこの桜塚高校で、
心も身体も立派に成長されました。
担任団をはじめ、教職員一同、心からお喜び申し上げますとともに、この間、本校の教育にご理解・協力をいただきましたことに深く感謝を申し上げます。
さて、卒業生の皆さん。皆さんは三年前、高校生活に様々な夢を持ち、
本校に入学をしました。しかし、皆さんを待っていた現実は、理想とは程遠い、厳しいものでした。新型コロナと言う、当時は正体のわからない病(やまい)が社会全体を脅かし、全国の学校において一斉休校の措置がとられ、
入学式どころか、登校することすら許されない日々が、長く続きました。
しばらくは自宅でのオンライン学習が続き、ようやく分散登校ができるようになったのは6月、入学からすでに二か月の月日が流れていました。
この体育館で初めて七十五期生全員が顔を合わせ、シンプルな形での入学式をおこないましたが、季節はすでに夏に向かっていて、
暑い日であったことを覚えています。
その後も、感染症は皆さんの一度しかない高校生活に影響を与え続けました。学習活動や学校行事の中止や縮小、部活動の自粛、大会や発表会の中止、さらには日常における友達との楽しい会話さえも制限され、今まで当たり前にできていたことが、そうでなくなりました。そして、卒業式を迎えた今日まで、コロナ前の高校生活が完全に戻ることはありませんでした。
人生において大きなウエイトを占める高校時代に、友達とじゃれあったり、
はしゃいだりすることができず、常に、感染に対する不安と、向き合い続けたストレスは、計り知れないものであったと思います。
しかし、そんな厳しい状況の中、皆さんは歩み続けました。決して、自分本位になることなく、様々な思いを持つお互いを思いやり、励ましあいながら、高校生活を送り、今日という日を迎えました。
今、皆さんの周りには、この苦しい日々を支えあった、かけがえのない仲間たちがいます。
二年生の時に北海道に行った修学旅行は、日程を縮小し、
制限がある中での実施でしたが、友達と多くの時間を共有することができました。
ノーザンホースパークや大倉山のジャンプ台、小樽散策などの観光や、ラフティングやトレッキング、アイスクリーム作りなどの体験イベントで過ごした楽しい時間は、かけがえのない財産になるでしょう。
また、昨年六月の体育祭では、過去の2年間が中止であったために、先輩の姿を見て、イメージをすることができなかったにもかかわらず、自分たちで工夫を重ね、後輩たちを引っ張りながら、見事に成功へと導きました。
さらに、九月の文化祭では、クラスで力を合わせ、できることを工夫し、舞台や教室でのイベントを成功させました。
春からそれぞれが、次のステージに進むこととなりますが、3年間を一緒に乗り越えてきた「絆」は、この先も、ずっと繋がり続けることでしょう。
出会った「奇跡」、そして「運命」に感謝し、いつまでもお互い「大切な存在」であり続けてください。
それでは、卒業する皆さんへの「はなむけ」として、私から最後に「年輪」の話をしたいと思います。
年輪とは、木を切った断面にある「輪っか」ですが、なぜ、あのような「年輪」ができるのでしょうか?
それは、季節があるからです。
木は、春先から夏にかけて豊かな日光を浴び、すくすくと育ちます。
成長が速いため、密度が薄く柔らかい素材となります。それが断面の白い部分です。
ところが、冬は木にとって厳しい環境です、寒さに耐えるこの時期は、ほとんど成長が止るため、密度が濃くなります。それが輪っかに見える黒い部分です。
つまり年輪は、「その木が何回、厳しい冬を超えてきたか」と言う証です。
そして木は、年輪を刻むごとに、強くなります。
「輪っか」に見える硬い部分の数が多くなればなるほど、木の幹は安定し、
たとえ強い風が吹いても、折れずにしっかりと立っていることができるのです。
すなわち、木は厳しい冬を乗り超えるたびに、どんどん強くなっていくわけです。
私たち人間も同じです。人生は、決して楽な時ばかりではありません。
寒い冬や嵐の日のように、耐えなければならない日も多くあります。
でも、それを乗り越えていくことで、その人の「年輪」が刻まれ、社会の荒波にも耐えることができる、強い力がついていくわけです。
例えば、コロナをきっかけに社会のデジタル化が一気に進みました。
今まではアナログでこなしていたことが、ICTによって効率的になり、社会にオンライン会議やテレワークなどの新しい働き方を生みだしました。
ピンチを乗り越えるための工夫によって、社会自体が一つ年輪を刻み、進歩をしたわけです。
また、これまで当たり前に感じていた「人との触れ合い」がどれだけ大切で、いかに心が癒されるのかを、考えるきっかけにもなりました。
友人や仲間とのなにげない会話や、触れ合う時間の大切さを、コロナから教えてもらったことは、これからの生き方や考え方にとって
大きなプラスになるでしょう。
そして、皆さんも厳しかった3年間を乗り越えることで、太い年輪を刻みました。たとえコロナが終息しても、これから皆さんが生きていくのは、
技術の発展や進化が急激に進み、変化に対応する力が求められる社会です。
この3年間「どう行動すべきか」、「この中で何ができるのか」と工夫を重ね、身につけた力は、必ず生きてくるはずです。
この厳しい中でもやり切ったという自信を、持ってください。
そして、これからも多くの試練が皆さんを待っていると思いますが、
全ては、年輪を重ねる大きなチャンスだと捉え、チャレンジをしてください。
困難にぶつかった時、自分自身の弱い面や、欠点に目をやり、「どうせ無理」と決めつけるのではなく、自分の力を信じ、必ずできるという前向きな気持ちで乗り超えてください。
みなさんの前には、常に未来の自分へと繋がる多くの道が広がっています。
ぜひ、自分の判断で道を選び、その選んだ道を、自信を持って進んでください。
大切なのは「どの道を選んだか」という事ではなく、「自分が選んだ道を精一杯歩いているかどうか」という事です。
皆さんの輝く未来と、活躍を心から楽しみにしています。
令和五年 三月一日
大阪府立 桜塚 高等学校
校長 田 尻 肇