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高7回卒業生 川淵 三郎 先生の新刊「キャプテン!日本のスポーツ界を変えた男の全仕事」

 今日、1学期終業式がありました。式の最初に校長から全校生徒にお話をさせていただくのですが、今回は、川淵三郎 先生の新刊「キャプテン!日本のスポーツ界を変えた男の全仕事」を題材とした話をしました。みなさんよくご存じだとは思いますが、川淵先生の半生を簡単に振り返ってみます。

 (1952年)三国丘高校入学と同時にサッカー部入部/高石中学校出身(1955年)全国高校サッカー選手権に出場(1957年)早稲田大学に入学し蹴球部に入部(1958年)サッカー日本代表デビュー/初出場初得点(1961年)早稲田大学卒業と同時に古河電気工業に入社、同サッカー部に入部(1962年)アジア競技大会に出場(1964年)東京オリンピックに出場(1970年)現役引退(1972年)古河電工サッカー部監督に就任(1988年)古河電工の子会社古河産業に出向(1989年)日本サッカー協会プロリーグ準備検討委員会委員長に就任(1991年)Jリーグ設立、初代チェアマンに就任/古河電工退社(2002年)Jリーグチェアマンを退任/日本サッカー協会会長=キャプテンに就任(2008年)キャプテンを退任し名誉会長に(2015年)日本バスケットボール協会改革のため共同チェアマンに就任(2019年)東京オリンピック選手村村長に就任

 ざっと書いてもこのボリュームです。世間一般に有名なのは、あのJリーグ開幕の時の映像と日本バスケットボール協会立て直しのために大鉈を振るった時の厳しい表情ではないでしょうか。6月30日に新刊が出たとききましたのですぐに購入し読みました。主に通勤電車の中で読んだのですが、時々目頭が熱くなってしまい他の乗客の目が気になりました。

 川淵先生の業績は勿論凄いことなのですが、私がびっくりしたのはそのスケールの大きさです。"川淵三郎はサッカーの人"という印象でしたが、Jリーグ立上げの時からすでにサッカーだけの人ではありませんでした。サッカー界を...ではなく日本のスポーツ界の未来を創ることをめざして動いていたのです。あのプロ野球全盛の時代に、Jリーグのチーム名に企業名を入れることを許しませんでした。地域のチームとしてスポーツを振興することで日本のスポーツ界は変わると考えたからです。あの時代にそんなことを考えていたということ自体が凄いことだと思いました。

 この本の中には川淵先生以外にも凄い人がたくさん出てきます。中でも私が特に凄い...というかヤバいと思ったのは、与論島にサッカー場を作った田畑さんという人です。田畑さんは川淵先生を島に招いて講演会を開きました。そして、その時に聴いた「夢があるから強くなる」という言葉に感銘を受けてサッカー場をつくることを決心しました。これだけ聴くと、何と飛躍した話と思うかもしれませんが、違うのです。田畑さんは、離島であることを言い訳にして挑戦することから逃げてしまう島の子どもたちを見て、大人が夢を持たないから子どもも強くならないんだと思ったそうです。田畑さんの、島のみなさんの、そして島の子どもたちの夢が叶ったのは9年後でした。島の中央には今も立派なサッカー場があります。

 このエピソードを紹介した上で、私が三丘生に語りかけたのは、夢は誰のためなのか?という話です。田畑さんが島の子どもたちのためにサッカー場をつくったように、川淵先生が日本のスポーツ界のために頑張ってきたように、夢には対象が居るということです。例えば、病気のせいでお友達と遊ぶことができず寂しい思いをしている子どもたちのために小児科の医師になるとか、将来の人類のために宇宙でも栽培できる作物の研究をするとか、お年寄りが幸せに暮らせるような人に優しい福祉施策を立案する人になるとか...です。患者さんを癒すことができる看護師さんになるとか...世界中を勇気づけるミュージシャンになるとか...数え上げればきりがありません。夢は必ず「誰かのために→こんな人になりたい」という文脈で語られます。だから、夢が見つからないと悩んでいる人は、誰のために役立ちたいのか?というところから考えてみるのが良いと思います。まず、そんなことを話しました。

 その上で現実に目を向ければ、三国丘高校には"夢に繋がる刺激"がたくさんあることに気づきます。三丘セミナーや探究学習もその一つです。国際交流や海外研修も勿論そうです。夏休みには多くの大学でオープンキャンパスが開催されますが、これも刺激になります。映画を観たり本を読んだりすることも夢に繋がります。最後に私が伝えたメッセージは「夏休みをしっかり楽しむこと」です。楽しむ気持ちが強い人ほど夢に巡り合えるチャンスが多いと私は思っています。

 夢を持った高校生は、その瞬間から走り出します。もし、そんな三丘生を見つけたらこのブログで報告したいと思います。お楽しみに!