緊急放送で津波について校長が講話〈防災避難訓練〉

 今日は防災避難訓練の日です。が、昨日の夜の大雨でグラウンドコンディションが不良であったため、急遽〈雨バージョン〉での実施となりました。実施した内容は以下のとおりです。

・予定の時刻に放送にて訓練を開始する旨を伝達

・地震発生を告げ、生徒に対して身を守る行動をとるよう指示

・揺れがおさまった後も、避難経路確認にためそのまま指示を待つよう伝達

・教員が避難経路を確認→結果を防災本部で集約

・化学実験室から出火確認→避難指示放送

 本来は全校生徒がグラウンドに集合し点呼をとる予定でしたが、その部分がカットになってしまいましたので、〈雨バージョン〉として校長が防災に関する講話をしました。以下、今日私が放送でお話した内容の骨子です。ご一読ください。

   みなさんは「釜石の奇跡」という言葉をきいたことがありますか?東日本大震災の時、釜石市では約1,300人の方が亡くなりましたが、鵜住居小学校と釜石東中学校では570人全員が無事に避難しました。これを「釜石の奇跡」と言います。

  では「津波てんでんこ」という言葉は知っていますか?津波が来たらてんでバラバラに逃げろという、この地方の言い伝えです。言い換えれば、率先避難者になれということです。  

  当時釜石東中学校の生徒だった人がこの時のことを振り返ってこんな風に言っています。

   逃げろと言われて高台に必死に逃げたけれども小学校からは誰も出てこないので心配しました。後から訊いたところによると、地域の大人が校舎の高い階に避難していた先生と子どもたちに声を掛け、急いで高台に逃げることになったそうです。走って走って、最初に辿り着いた場所で全員いることが確認されたのでホッとしたのですが、誰かが「ここも危ないのでは」と言い出したので、さらに上に逃げることとなりました。

   この話に2つの教訓が含まれていると思っています。一つは、一人ひとりが自分に与えら れた役割を果たすことの重要性です。「釜石の奇跡」の場面では大人がしっかりと役割を果たしたので、小学生も無事に避難することができました。本校で言えば、教職員は教職員の生徒は生徒の果たすべき役割をしっかりと認識しておくことが大事ということになります。生徒は生徒の役割と言いましたが、そのことは後で触れます。

   もう一つは、誰でも意見を述べることができ、その意見をちゃんと受け止めることができる    集団であることの重要性です。津波の被害なんて誰も想定できない中、最初に辿り着いた場所で誰かが呟いた一言に反応して全体がすぐに動けたことは大きいと思います。その場にいたら大きな被害を蒙っていた訳ですから。これは、もしかしたら日頃から訓練できることかもしれません。例えばクラスでも、一見的外れな意見が出された時に「話にならない」と無視するのかみんなで聴いてみるのかは、時として結果に大きな違いとなって現われます。

   さて、我々が今いるこの場所で地震が起きたらどうなるのか、考えてみましょう。堺市の想定震度は、上町断層帯地震で震度7、南海トラフ巨大地震で震度6弱です。堺市の津波ハザードマップによると津波避難対象ラインは阪堺線の西側ですが、津波注意ラインは南海高野線を超えています。避難目標は、浅香山小中学校・浅香山病院方面と三国ヶ丘方面となっており、三国ヶ丘方面で最初にある学校は三国丘高校です。以上の情報をもとに想定してみると、大地震が起こり津波の可能性が報じられると、南海高野線より海側の人が坂を上って大量に避難してくるということになります。

   地震発生時刻が昼間で、みなさんが学校にいる時間帯だとすれば、今と同じ状態で避難者の方々が押し寄せるということになります。その時、我々はどう対処すべきなのでしょうか。先ほど、生徒は生徒の役割と言ったのはこのことです。勿論、教職員が指示を出しますし、市の防災部局の職員さんも駆けつけてくれると思いますが、生徒は生徒として避難者の方々の心情を理解して自分たちの役割を果たすことが求められるということです。具体的な役割がどんなものになるのかは想像しきれませんが、今から覚悟だけは決めておく必要があると思います。

   これは地震など大災害に限らないことかもしれませんが、何か大きなことが起きた時は自分を大事にしながらも、常にお互いのことを慮(おもんばか)りながら行動するということが何よりも大事なのかもしれません。「釜石の奇跡」が教えてくれたことを忘れずに、互いを思い合う心を大事にすれば、自然災害を含むどんな大変なことやしんどいことも乗り越えていける気がしています。

私からのお話しは以上です。最後まで聴いてくれて、ありがとうございました。