「進路新聞78」第4号が出ました。紙面を通じて、三丘生として最後の1年をスタートさせた78期生に、学年団の先生方から熱いメッセージが送られています。22人の先生方のメッセージの中で、私の心に刺さったのは『諦めていいのは、諦めることだけ。最後まで"全力"で!』でした。短い言葉ですが、この中にすべてが詰まっているような気がします。
三丘生にとって3年生という時期がどれほど大事かということは、誰もが知っていることです。しんどいこともあるでしょうが、自分の志を遂げることを諦めることだけは絶対にしてほしくない...これは我々三国丘高校の教員が共通して持っている願いです。だから、諦めていいのは諦めることだけなのです。「もう、私、諦めるの諦めたわ」と言ってくれたら嬉しいのです。
受験生様になるのはやめてくれ!という言葉もよくわかりました。78期生は、なぜ今自分はここ(三国丘高校)にいるのかということを考えてほしいのです。中3の時、私学の進学校に進むという選択肢もあったはずです。もし、その道を選んでいたら、特進コースに所属し、高校入学と同時に大学受験に向けた勉強が始まっていたと思います。少なくとも、三国丘高校での2年間と比べたら、部活動や探究活動、学校行事や海外交流などいろんなことを体験できる多様な高校生活ではなかったでしょう。
「受験生様」という言葉は、受験を言い訳にする人という意味だと思います。3年生になって、受験が目の前に見えてきたタイミングで、受験を言い訳にして三国丘高校の良さを消してしまうのはやめてくれ!と言っているのです。
他校の校長からきいた話ですが、半導体に関する先端技術を研究している大学教授が嘆いていたそうです。大学院を出て、さぁこれから本格的な研究を始めようというタイミングで大企業に就職してしまう学生が増えているというのです。破格の給料を提示されたら、簡単に靡いてしまうと仰っていたそうです。その原因として、その教授が分析されていたのは「価値観」だそうです。勉強以外のことを十分に経験せずに入学した学生は、一つの価値観に縛られる傾向があると感じているそうです。苦難の道かもしれないけれども研究を続けて、未来の人々の役に立つことに価値を見出すことができる学生が増えてくれれば、日本の研究レベルはもっと上がるのに...と残念がっておられたそうです。そんな中、教授曰く、期待するのは、公立高校でいろんなことを経験してきた学生だそうです。
そう言われたら、なんとなくわかるような気がします。勉強して学力を向上させるという価値観だけではなく、部活動で仲間を増やし目標を共有するという価値観も、自ら課題を見つけるところから始まる探究活動で自由な発想を形にするという価値観も、いろんな価値観を経験する三国丘高校の教育は、大学や大学院で終わらない一生モノの財産です。そんなことがわかっているはずの三丘生が、今さら「受験生様」になることの矛盾を理解してもらえれば「受験生様になるのはやめてくれ!」という言葉の真の意味が理解できると思います。
私が、地球に住む一人の人間として願うことは、多様な価値観を持つ人に未来を託したいということです。三丘生は、大きな志と多様な価値観をもったリーダーになれる資質を持っているのです。そんな人材を輩出すること、これこそが、三国丘高校の教育目標です。