本日は3年生の一回目の登校日です。今日も正門に立ったり、教室の様子を見に行ったりしました。教職員も登校日以外の学年が登下校の指導や自転車の整理に当たるなど、協力して生徒を迎えています。やはり、学校に生徒の姿があるというのは、いい光景です。一方、ここ数日の報道等を見ていると、一挙に開放的なムードが広まりつつありますが、自粛に関する要請や法律の有無や施行解除によって、ウイルス感染力が直接左右されるわけではないので、引き続きの用心が必要でしょう。何のために我慢をしたり、みんなで協力していたりしているのかを考えて今後も行動していかなければなりません。
さて、学校行事などが再開されるまでにはまだ時間がかかると思うので、読書について記事を書いてみたいと思います。しばらく、屋内ですごす時間が増える状況が続くなかで、こういう機会にまだ読書をあまりしない子どもたちが、その習慣を身につけることができるではないかと考えます。残念ながら日本の中高生の平均読書時間は短くなるばかりのようです。日本では小中高と学年が上がるのに反比例して、読書の割合が減っています。大阪府では子どもたちがもっと本を読むようにするにはどうすればよいかを考える会議を設けています。私は一時期、そのうちの一つの会議のメンバーに入っていたのですが、府域の現状を詳しく知って、強い危機感を覚えた記憶があります。
我々が活動する時間は限られています。一日のうち、三分の一から四分の一は睡眠をとらなければなりませんし、残りの時間も学校や仕事、家事、食事などで多くを費やします。それでもまだ余裕のある時間に自分の好きなことをするわけですが、その時に何をするでしょうか。読書というのは時間がかかります。たとえば、小説を読むのに毎日1ページずつ読んでいたのでは、話の展開がわからないでしょう。ある程度、まとまった分量を読まないと文章が伝えようとしている内容を把握することはできない。まとまった分量の文章を読むには、それなりに時間をかけないと無理だということになります。それに、すぐれた書物の良さや面白さがわかり始めるのは、ある程度読み進めてから、場合によっては2度目に読んでいるときになることも珍しくありません。おもしろくなるまで、我慢して読み続けることが必要になるのです。
それに対して、画像や音楽に関わる娯楽や趣味は、読書に比べて即効的におもしろくなるものが多いのです。芸術的な絵画や古典音楽などは時間をかけて理解に努めなければなりませんが、有名な書物一冊を読んで理解するのに要する時間に比べれば少ないと思います。いわゆる娯楽小説と呼ばれるジャンルでも、読み通すには何時間かはかかる。しかし、短時間で編集された動画や、画像、音楽などはあまり時間をかけずに楽しむことができます。最近はテレビを見ない若者も増えているようですが、テレビも読書に比べれば、享受するのに労力を要しません。ですが、一定の時間は画面を見続ける必要あるので、それが嫌だという若者が多くなってきているそうです。一昔前は、読書の最大のライバルはテレビだと言われていたのですが、そのテレビでさえ敬遠されだしているわけですから、ましてや読書離れがますます進むのは当然かもしれません。
メディアが提供するものを一律で否定する人もいますが、私はそういう立場はとりません。私自身がテレビや映画、音楽媒体などの楽しさを味わってきたからです。たとえば、高校生の時に「ウォークマン」が流行って、家の外でも自分の好きな音楽を楽しめるようになった時は、とてもうれしかったことを覚えています。文明が発達して、より様々な楽しみを享受できるようになったのですから、むしろ喜ばしいことです。コロナ感染拡大防止のための外出自粛期間にもし現在ほど携帯電話が普及していなかったらどうなっていたでしょうか。
こういう読書をめぐる状況を踏まえたうえで、それでもやはり読書をしたほうがいい、ということを伝えるには、きちんと説得力のある理由を説明することが必要でしょう。情報化社会では、その情報の即効性が重んじられる傾向があります。また、一度に伝えられる情報量の大きさも注目されます。そういう点でいえば、何ページもわたる活字を読む読書と、一目で視覚などから多くの情報を得ることができるメディアとでは歴然とした差があります。ある景色の美しさを他人に伝えるのに、言葉で描写して伝えるのは大変ですが、画像を送ればあっという間です。情報化を一層進めようとする社会の動きの中で、読書の効用を説く時だけはタイムスリップしたように、近代からあまり変わらない感じで理由もあいまいなままで「本を読むべきだ」という説教をしても説得力がないと思います。時間をかけてでも活字から得る情報が他に換えがたい価値を持っているということを、読書の良さやすばらしさを知っている大人が若い世代に伝えることができているかどうか。少し長くなりましたので、続きは機会を改めて書こうと思います。