今朝はまだ曇っていますが、予報では明日から晴天が続きそうです。例年ならば、夏休みに入っているはずの、この時期の授業日第1週目が終わります。コロナ感染症対策、降り続く強い雨、むしむしとする暑さ、これらに直面しながらも生徒と教職員は懸命に学校での教育活動に取り組んでいます。まずは来週の6日までがんばっていきたいと思います。
今日は午後からPTA総会が開催されます。5月に開催予定でしたが、感染症対策のためにこの時期になっています。旧役員等の皆様、例年よりも長く任に就いていただきましてありがとうございました。本校が大変お世話になりました。新しい役員等の皆様、これからよろしくお願いいたします。
今回は土用の丑のうなぎのところでもふれた、陰陽五行(いんようごぎょう)の考え方について少し書いてみます。古典の授業でも陰陽五行を正面切って教えることはあまりないのですが、実は非常に大切な知識だと私は思っています。なにしろ、世界観がほとんどこの考え方に染まっている時代の文章を読むわけですから。順を追って説明するので、堺西高の生徒のみんなもしっかりとついて読んでみてください。
陰陽思想は中国で生まれました。陰と陽から生じた木火土金水の五つのエレメントによって森羅万象が成り立っているという考え方です。ものの見方や考え方は住んでいる地域の地理気候条件に左右されます。たとえば、水や食料を確保しやすいところと確保しにくいところでは違う文化文明が発達することは当然でしょう。陰陽思想が生まれたのは中国でも黄河周辺だそうですが、緯度的にみると、日本の中心地域と同じようなところにあります。わかりやすく言うと、四季のめぐりがはっきりとしているということです。ですから、陰陽思想は日本でも受け入れられやすく、わが国の文化に大きな影響を与えたわけです。
陰と陽は対極をなすのですが、もともと「混沌(こんとん)」という同じものから生じたので完全に相反するものではありません。ですから、この両極は交流の動きを見せるのです。そうして天には太陽(日)太陰(月)が生じ、地には木火土金水が生じました。「五気(ごき)」です。
天にも陰陽がありますから、地のファイブ・エレメンツにもそれぞれ陰陽があります。陽は「兄」、陰は「弟」であらわされます。気の質は「兄」が「剛」、「弟」が「柔」。木にも兄(え)と弟(と)の区別があって、「木の兄」=甲(きのえ)、「木の弟」=乙(きのと)というふうに呼ばれます。五つの要素にそれぞれ陰陽があるので、5×2=10個になります。これがいわゆる「十干(じっかん)」です。すなわち「甲乙丙丁茂已庚辛壬癸」。「干(かん)」は「幹(かん)」です。
令和2(2020)年の十干は「火(か)の兄(え)」=「庚(かのえ)」にあたります。この十干に我々のよく知っている「十二支」が組み合わさって「干支(かんし)」になります。「支(し)」は「枝(し)」ですので、「干支」は幹と枝の関係になります。今年は「子(ね)」ですから、干支は 「庚子(かのえのね)」ということになります。
ちなみに十二支というと動物を思い浮かべますがもともとは植物の状態をあらわしたということです。「子(ね)」は「ふえる」で種「子」内から新しい命が萌しはじめる意味だとされます。「庚(かのえ)」の音の「こう」は「更(こう)=あらたまる」に通じて、熟したものが行き詰まり、自然とあたらしいものに改まっていく状態をさします。組み合わせると「庚子」はものごとが新しいものに改まっていく年ということになりますね。これを今年の世相に当てはめるとどうなるか、というふうに考えていくのです。
どうでしょうか。実在する様相に基づいて、整然と宇宙の理法を説明していくので、説得力があります。この西洋自然科学とは違う世界観の影響を受けた日本においても、文化の深いところまでそれが至っていることは当然かもしれません。季節も色彩も人体構造も味覚などもすべて陰陽五行で位置づけられ説明されます。
ついでに言えば、十干と十二支の組み合わせなので、干支は120個になるはずです。ところが、「還暦」が60歳をさすことからもわかるように、この組み合わせは60個なのです。干支は60で一巡するので暦が還るということです。実は十干に兄弟(えと)の陰陽があったように、十二支にも陰陽の別があり、「支」のうちで陽にあたる6個のみが「干」の陽と結びつくのです。「子(ね)」は陽の支なので、陽の干である「庚(かのえ)」と結びつくことはOKですが、陰の支である「丑(うし)」は「庚」と結びつくことはできません。
陽の干の5個×陽の支6個=30個、同じように陰の干の5個×陰の支6個=30個。両者を足すと60個になります。この60個は「六十花甲子(ろくじゅうかこうし)」と呼ばれます。生徒のみなさんには、古典常識の勉強をかねて、自分の生年の干支を調べてほしいところです。
では、具体的にどういうかたちで文化に影響を与えているのか。民俗学的におもしろいのはこの部分ですが、長くなりましたので、それについては、また稿を改めたいと思います。