34  新しいテクノロジーを活用した授業の前提として

 このコロナ感染症拡大防止の一連の動きの中で、学校の教育活動のオンライン化が注目を集めています。「新しいもの=便利なもの」というイメージがあるので、いわゆる「オンライン授業」も脚光を浴びているのです。そのこと自体を否定するわけではありません。しかし、実際に教育の現場でICTを活用していく場合には、きちんと特質をふまえておくことが大切になります。その特質には長所ばかりではなく、短所もあるはずです。それをも把握したうえで、新しいテクノロジーを活用していく必要があると思います。

 たとえば、黒板にかわって電子黒板を用いる。チョークを用いないので、粉も出ませんし、手も汚れません。しかし、故障をしてしまった時にはどうでしょうか。停電になることもあるでしょう。電子機器を用いた授業をする時には、必ず機器の不調との時に備えておく必要があります。(災害時に電波障害が発生した場合、携帯電話が使えないので、テレフォンカードを携行するのと同じです。)研究授業などでも、原因はさまざまであれ、案外これが多いのです。時間は過ぎていくので、授業担当の教員はあたふたとしています。私は同じくらいの機能があるケースでそれくらいを使う場合には、電子機器ではないものを使うほうがいいと考えています。

 けれども、古典の授業で本文に出てくる重要な文法の説明をする場合に、どうしても前後の文脈が必要になるので、ある程度の長さの本文を板書せざるをえません。文法の説明の鉄則はわかりやすく端的に行うということです。本文を黒板に写してから文法の説明を終えるまでの時間はできるだけ短くして、内容の追究に時間を割いたほうがいい。そういう時に電子黒板は大変便利です。本文をあらかじめ映し出せるからです。説明は書きこんだほうがいいでしょう。生徒の雰囲気や顔の表情を見ながら説明の順を変えたり強調点を変えたりするためです。工夫はTPOとマッチしてこそ意味があります。

 そのデジタル機器がこれまでの授業のどのような機能を代わりに果たしてくれて、どういう点でより進んだ効果をあげるのか。故障などのリスクを考えると、あまり単純な機能は従来通りのもので行うほうが無難ですが、新しい機器でないと高い教育的効果が生まれない内容や場面であれば、どんどんと活用するべきでしょう。活用するためには、教材の特色、生徒の学習到達度と理解力、教室環境などを熟知しておく必要があります。教員自身が実際に源氏物語の登場人物の心情に深い感動を覚えたならば、その感動を新しいテクノロジーを用いて効果的に伝えて、生徒を主体としてその場面について考え、表現させるのが目的です。

 開発に関しても提言させてもらえれば、技術はすばらしいのに、現場では使いにくいという事態をさけるためにも、これからの授業のあり方を考える時、デジタル機器やソフトの開発にはぜひとも現場の教員の意見も積極的に取り入れていってほしいと思います。

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