37 夏休みの初日です ~伝説と「数」~

 短いですが、今日から生徒は夏休みです。暑熱の最もこもる時期、授業がないとはいえ、学校閉庁日を除いて各校は様々な教育活動を行います。コロナ感染症対策と熱中症対策をしっかりとしながら、それぞれの活動を充実させてほしいと思います。

 今回は、「数」にまつわる話をします。「数」というと、西洋で大いに発展した自然科学の「数学」がまず思い浮かぶと思います。しかし、「数」という漢字があることからも分かるように、中国でも「数」に関する文化は存在しました。しかも、非常に重んじられたのです。これもはやはり陰陽五行に関係しています。

 一から九までの数を九つの区切りがある正方形のマス目に入れていきます。当然、いろいろな入れ方ができるのですが、縦横斜めのどの方向から数えても、数の和が「15」になるパターンがあります。それだけでも不思議な感じがしますが、数の位置が方角によって決まっているので、結局は一つだけのパターンになる組み合わせがあります。たとえば、一は北、二は西南というふうに。実際に作ってみればわかりますが、中央にくるのは五です。これを図示したものが「九星図」というものです。いわゆる「魔法陣」です。

 少し話がそれますが、「数」やそれに基づいた記号はそれだけで魔除けの力があると言われます。ドイツの文豪ゲーテの「ファウスト」の中にも、悪魔メフィストヘレスはファウスト博士が家の周りに記した幾何図形の中には入ってこれないという場面があったと思います(数式だったかな?)。数図が結界を形成しているのです。逆に、魔的なものを呼び寄せるものは、音です。夜に口笛を吹くのは縁起が悪いと言われるゆえんです。能舞台を見ていると、あの世からこの世に怨霊が登場する場面で、笛の音が非常に効果的に用いられているのがわかります。招魂の力を笛音が持つのです。日本の虚無僧が演奏した尺八も神仏の魂に届きそうな感じがします。でも、不思議なことに、倍音の関係などを見ればわかるように、その「音」と「数」は密接な関係を持っているのです。定理で有名なピュタゴラスは空の星々の配置と動きを見て、天の音楽を聴けたと言われています。

 閑話休題。先ほど述べた九星図に関しては次のような伝説があります。中国「夏(か)」王朝の始祖「禹(う)」王が治水工事を行ったときに一匹の不思議なカメが現れた。甲羅に神紋を帯びている。神亀です。神紋は一から九までの数を表していたということです。その配置が魔法陣「九星図」です。図案化すると「洛書」というものになります。(派生して、なぜ通常の伝達ではない文書などを「落書き(=洛書)」というか。通常の形では伝えられない意図を伝えるというとです。)動物の出現が天の意図を伝える、という伝説が中国にはあるようです。今年の大河ドラマ「麒麟がくる」の「麒麟」もそうです。(天の使いである麒麟の死体が発見されて孔子が大いに嘆いたという文章を読んだことがあります。)

 八卦占いというものがありますが、それを行う人を易者と言います。その「易」でも数が重んじられていて、こちらは一から十までの数を扱っています。伝説の帝である伏羲が王になったとき、黄河から竜馬(りゅうめ)が出現しました(「麒麟」と「竜馬」とどう違うのか、形態を想像するとなにか似たような感じになると思うのですが)。その竜馬の背にあった神紋が「河図(かと)」と呼ばれるものです。これもなかなか面白いのですが、言葉で説明するのは難しいので、興味のある人は調べてみてください。「一・六」が北に配置されていて、五行の「水」位にあるとされたりしています。

 さて、長くなりました。なぜ我々が「数」に対して吉、不吉を感じたりするのか。「七・五・三」などという「数」にこだわる文化を持っているのか。そういう点での感覚の文化的なアンテナを本校生徒にも持ってほしいというのが、今回の記事の意図です。欧米でも「十三日の金曜日」とか「999」というふうな数にまつわる伝説は映画化もされました。

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