本日から3年生の2学期授業が始まります。ここに来て、連日の猛暑が続いています。気温で37や38という数字が並ぶことが普通になってきていますが、たとえば昭和のころには考えられないことでした。体温平均の36.5度を超えるかどうか、超えたら大騒ぎをになっていたと思います。3日前くらいから今週末にかけての10日間ほどは、その体温超えの最高気温が連続するということですから、日本も本当に暑くなりました。
地球温暖化の影響が取沙汰されて久しいですが、人間生活だけではなく、生態系にも変化をもたらすことが心配されます。西高生のみんなには生態系のことにも関心を持ってほしいと思うので、専門家ではありませんが、いささか生き物関係に興味を持っているので書くことにします。
釣りを趣味にしていることもあり、私は魚が大好きなのですが、日本の近海でとれる魚の種類や量は確実に変わってきています。たとえば、比較的水温が低いとされるところで、以前はまったく漁獲量がなかった「鰆(さわら)」が獲れるようになり、地元のブランド魚にしている地域があったりします。食物連鎖のはじめの部分である植物性プランクトンが気候条件の変動の影響を受けると、それを餌にする動物性プランクトン、そしてそれを食べる小型魚、そしてそれを捕食する大型魚というふうに、すべてに変化が反映されます。ちなみに今年の大阪湾には初夏からこれまでにかけて小鯖が湧くように押し寄せてきていて、ビギナーでもサビキ釣りで数があがっていました。これもここまで大漁の状況は記憶にありません。
昆虫の世界でもそうで、私たちの子どもの頃には希少価値のある虫だったクマゼミが今では、大阪でも一番多いセミになってしまいました。当時は蝉獲りに行って、めったに見かけない透明な羽の大きなセミを見つけると、とてもワクワクしてものでした。舗装化されて、地中温度が高温になるところにも対応できるのはもともと南方にいたクマゼミです。ハエや蚊、ゴキブリなども減りました。これらはあまりありがたがられない存在ですが、これらの数が減るということは、それを捕食する生き物も減るということです。虫の数が減ってまず影響を受けるのは小鳥だと思いますが、そういえば、ツバメや雀の数も減ったように思います(もちろん、他の要因もあると思います)。我々の生活には直接に関係ないようですが、増えすぎた虫がもたらす作物被害を防ぐ役割をするものがいなくなるということです。
今、都市部でのカラスの害が話題になることが多いのですが、先日、そのカラスが日本にとっては頼もしい存在たりうるという話を読みました。高温状態が原因で大陸で大発生しているサバクトビバッタによる被害が世界の食物事情に大きな脅威になっているというニュースが流れていますが、日本は面積に対してバッタの天敵である鳥の数が多いので、大丈夫だろうということなのです。この話を知り合いにすると、あれだけの大群相手ではいくら鳥がいても防げないだろうというのです。あのバッタは飛翔能力が高いと言われていますが、それでも大群で日本海を渡りきるのは難しいでしょう。上昇気流が発生している高度まで飛翔できる個体はそれほど多くないと思います。渡れた個体があったとしても、日本の鳥の餌になる確率が高い。特にカラスは大型昆虫をよく食べますから、バッタにとっては最大の天敵でしょう。人間にとっては大きな味方です。
夏の間に都市部でカラスの数が減るのは、大量のセミが山や森、公園にいるからだと私は思います。カラスにとってはクマゼミなどの食べ放題状態ですから、ゴミをそれほど必死に荒らさなくても食べ物にありつけるということです。季節的にセミなどの昆虫がいなくなるとカラスたちはまた住宅街に集結するでしょう。
私もカラスには夜中や早朝の鳴き声などでも悩まされるのですが、それよりも恐ろしいのは人為的に生態系を狂わすようなことを人間がしてしまうことかもしれません。飛翔能力の点では海を渡れない虫も人為的に持ち込まれたのでは、渡ってきてしまいます。バッタの卵が大量に付着した土類を何らかのかたちで国内に入れてしまうと、一挙に大発生という事態にもなりかねません。外来種を目の敵にするような番組もありますが、もともとは人間が持ち込んだのであって、その点をしっかりと反省することなしに、生き物をせめても仕方がありません。
この暑さで我々がまず人間のことを心配するのは当然ですが、同じようにこの気温に耐えられない多くの動植物が病気になったり死んだり(枯れたり)していることも認識する必要があるでしょう。動植物の衰退はやがて人間生活にも大きな影響を与えることです。感染症対策の動きを見ていても分かるように、経済の動きを鈍らせるような情報を発することについては、各国とも後ろ向きになりがちです。二酸化炭素排出量など地球温暖化をめぐることでもそうで、科学技術の発達による力技で何とかしようという姿勢がほの見えますが、どうなることでしょうか。人類が次の世紀を迎えるころのことを想像すると、考え込んでしまいます。政治的な運動やスローガンを離れて、客観的に冷静になって、この猛暑など身近な現象をヒントにしつつ、我々の子孫たちためにできることを考えていくことが大切です。そういうことを時間をかけて考えるためにも、まずはこの数日の暑さをしっかりとしのぐようにしましょう。