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10 引き続き感染症の対策をしっかりと ~『徒然草』弓の修業でのアドバイス~

 感染症対策でマスクを着用しなければならないなどの期間が長くなっています。これからは暑い時期を迎えますから、他者との距離がとれていて体内に熱がこもっている時など、適宜マスクをはずす場面もあると思いますけれども、その後できちんと着用し直すことが大切です。人間は「慣れ」が生じるとどうしても「スキ」や「油断」を生んでしまうものです。当人はその状態に気がつかないことも多いので、周りからの注意も大切になります。

 高校の古典教材として『徒然草』の二本の矢の逸話がよく掲載されています。これは無意識のうちに生まれる「スキ」についての話になっています。弓の練習をしている初心者が矢を二本持っていたところ、師匠がそれはよくないので一本にしておくようにと指摘したという内容です。兼好法師が言うように、師匠が見ているのですから初任者も手抜きしようなどと思うはずがありません。二本持っていても、最初の一本目をいいかげんに射ることはないでしょう。しかし、無意識のレベルでは後の矢を頼んで油断が生まれることを師匠はわかっているのです。だから、非常に具体的に指導したわけです。

 抽象的に精神的な言葉ではっぱをかける「師」もいます。「油断するな!」「スキを生むな!」という具合です。でも、そのアドバイスを受けても本人は油断しているつもりはないのでどうしていいかわかりません。かえって委縮してしまうことも多いでしょう。その点、この弓の師匠はすぐれた指導者だと言えます。「あなたの文章は間延びして長いから、改めなさい」というよりは「あなたの文章は「が、」で次に続くことが多いので、文の意味をはっきりさせるために、いったんそこで文を区切って、ふさわしい接続詞を意識して使ってごらん」というアドバイスのほうが具体的でわかりやすいのと同じです。

 アドバイスのタイミングも大切で、おそらくこの弓の師匠は弟子が的に実際に向かう時点で声かけをして注意を促しています。練習を始める前に言うと臨場感に欠けているのでそのつもりはなくても適当に聞いてしまうかもしれません。終わってからでもそうでしょう。まさにこれからという場面で本人が矢を二本手にしているところでアドバイスしています。

 感染症に関しては、長期間に渡っていますので注意喚起のタイミングもより難しくなっているのですが、西高生の状況を把握しながら、慣れからくる気のゆるみが見られるようであれば特に強調しての注意をしていきたいと思います。なかなか先がよめない状況が続きますが、安全のために粘り強く対策にとりくんでいきたいと考えています。

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