12 情報の信頼度をたしかめる力の育成を

 今日から保護者懇談が始まります。保護者の皆様、気をつけて御来校ください。

 日中の気温が30℃に届く時期になってきました。これからは熱中症にも気をつける必要があります。コロナ感染症、大雨、熱中症それぞれにしっかりと対策をすることが大切なので、生徒たちも大変です。リスクを回避するための対策が相反することもある(暑さが厳しい状況下でのマスクの着脱に関してなど)ので、その時々のシチュエーションを見きわめて、適切に行動する力が求められます。そのシチュエーションの変化をとらえるためには情報をとおして予測していくことができなければなりません。天気予報をチェックして雨具を用意する必要があるかなどです。

 情報には信頼度があります。履物を足から蹴り離して裏向きになれば雨だという情報とテレビで気象予報士がデータ分析にもとづいて伝える雨になりますという情報とでは、後者のほうが信頼度が高いのは明らかです。今時、履物の天気占いを信じる人なんかいないよと笑う人もいるでしょう。しかし、そういう人も不安にかられたり、感情的になったりしている時は信頼度の低い情報でも信じこんでしまう可能性があります。「今、この○○をかっておかないと損だ」という情報が流れて周りの人たちがワッと買いに走っている状況におかれると、自分も買わないと本当に損をするのではないかと思ってしまいます。特に根拠を確かめたわけでもないのに、衝動的に買ってしまうこともあるでしょう。

 頭痛で悩んでいる人が蝶が飛んでいるのを見たら痛みが治まったので、頭痛を治すには蝶を見ればよいということを人に勧めても信用する人は少ない。しかし、ある場所で汲める湧水を飲んで痛みが治まったという情報ならどうでしょう。実際に治まった人は生々しい経験を信じた状態で語りますから、自分も頭痛で悩んでいる時には飲んでみようと思う人も出てくるでしょう。少しでも因果関係があるように感じられる情報は受け入れがちなのです。信頼できるかできないかの二分法で「できる」と判断される結果です。

 コロナ感染症関連でも多くの人が不安や恐怖を感じているので、出てくる情報に振り回されている現状があります。本当はこういう大問題で社会全体が浮足立っている時こそ、情報の信頼度をはかることが大切なはずなのですが、流言にまどわされて、たとえば自分も風評被害の加害者になってしまうケースも発生しています。マスコミやネットでの状況をみるといっこうに改善される様子がないのは残念です。『徒然草』のなかで「己れが境界にあらざるものをば、争ふべからず、是非すべからず。」と兼好法師は述べています。「自分が専門としてよく知っている以外のことについては、人と争ってはいけないし、その良い悪いについて意見をとやかく言うのはやめなさい。」ということです。これは、いろいろな人が一緒に落ちついて暮らしていくうでの大切な生活の知恵です。そういう良識にもとづく生活の知恵をふまえないような風潮をメディアが助長していることが今の社会の落ち着きのなさを招いているのではないでしょうか。

 西高の生徒には違う日常が続く中で、情報の信頼度を見きわめながら、他の人たちと協力しながら生きていく力を、こういう状況のなかでこそ養っていってほしいと思います。

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