44 SDGsと第九

 現在、本校は短縮授業期間に入っています。今日は3年生が球技大会を行います。今日の夕方から天気がくずれて、その後週末には大阪でも降雪があるかもしれないくらいに厳寒状態になると言われています。昨日の職員朝礼でも、部活動等を行う場合は体調管理と交通機関への影響等に留意するように、伝えたところです。今回は少し、音楽の話題を書きます。

 オミクロン株関係の入国制限などで、年末に演奏する外国人指揮者が振る第九に変更中止が出ているという記事を見ました。国内の感染状況が落ちついたので、さあ音楽関係もこれからは盛り返すぞという雰囲気になっていたところに、この騒ぎですから関係者の落胆も察して余りあります。

 年末にこれほど第九を演奏するのは日本だけだとよく言われます。たとえば、祖先にはハンガリー系の人もいたというドイツ人ベートーヴェンが創作した曲をアメリカから招いた指揮者と日本のオーケストラで演奏する、これこそ文化的な国際交流の具体化でしょう。(今年度のポーランドで開催されたショパンコンクールで日本人ピアニストが二人も入賞したことが話題になりました。ポーランドの人々にとって、ショパンの音楽は自分たちの魂の音楽だと言われています。その魂に響くような表現を日本人が、しかもそれぞれ個性的にピアノを通して演奏しているのを聴いて、私もいたく感激しました。)

 大学生の時に大阪フロイデ合唱団に所属していたので、中之島公会堂で練習を重ねて、大阪フィル演奏の第九の舞台に何年か立ったことがあります。ぜひテノールのパートリーダーにということになったものの、ちょうど卒論などの準備のために残念ながら退団してしまいましたが、とても良い経験をさせてもらいました。中学生の時からベートーヴェンの音楽に感動して、繰り返して曲を聴くようになっていたので、第九を唄わせてもらえるということがうれしくてたまりませんでした。実際に合唱してみると、当たり前ですが、やはりすばらしい。ベートーヴェンの精神性の高い、人類愛の理想が音の響きとなって自分の身体を通過していきます。そして、それが他のパートの響き、オケの響きと混然一体となって祝祭的な時空を生み出していて、緊張しながらも自分がそのなかにいるということが高揚感を与えてくれました。

 「SDGs」に色々な項目が上がっていますが、ベートーヴェンが第九でうたいあげたような精神とみごとに重なっています。「平和と公正をすべての人に」など、各項目ともに当たり前のことが挙げられているようですが、それを実際に実現していくのはかなりの困難をともなうものばかりです。未来社会のことを考えると、困難だからといって解決に向かっての取組をあきらめることはできないのですが、その取組を支えるには強い情熱を伴った意思が必要でしょう。ベートーヴェンのように音楽に哲学的思想性を持ち込まずに純粋器楽としての美しさを追究するのが正当だという見方も昔からありますが、私は芸術文化というのはそれぞれの特色を大切にしつつも多様な複合性を含んだ豊かさを持っているものだと思います。音楽をイデオロギー的に利用するのは嫌いですが、ベートーヴェンの音楽のように人間精神に情熱的な意思と普遍的な理想を伝えるような芸術はこれからも大切にしていくことが必要だと思います。コロナ禍に負けずに芸術文化分野の方々にも頑張ってほしいと思います。

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