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【三丘セミナー】くすりは汗と涙の結晶〈住友ファーマ研究員〉

 三丘セミナーは三国丘高校独自の取組です。他の学校にはありません。各界の第一線で最先端の研究や革新的な実践をされている大学教授や医師、研究者などのみなさんにお越しいただき90分の講義を受けます。対象は1、2年生全員です。自分の興味関心に応じて選択し受講します。

 中でも、昨日行われた表題の講義は一番人気の講座です。受講希望者が多すぎたので、今年の三丘セミナーの中で唯一受講人数の調整を行いました。受講した生徒数は100人です。講師は、大阪大学大学院博士課程卒業後住友ファーマ株式会社に就職し研究者として4年目を迎えるという 南野 宏 先生です。ご自身の趣味や高校時代の話から始まり、なぜ大阪大学をめざしたのか、大学院での研究内容とそこに魅力を感じた理由などを親しみやすい口調でお話しいただきました。生徒にとっては、ちょっと先の自分を想像しながら聴けるお話でしたので真剣に頷きながら聴いている様子が散見されました。

 前半は、グループディスカッションです。お題は「あなたは全ゲノム解析の結果を受け取るか?」ということです。全ゲノム解析をすると自分が将来罹患する可能性のある病気までわかってしまうそうなので、その結果を受け取るか受け取らないかは大きな問題です。このワークではある設定のもとディスカッションが行われました。その設定とは"日本に住む18歳全員を対象に全ゲノム解析をすることになり、その結果の告知については任意というルールが定められた"というものです。「将来罹る病気がわかれば予防できるから結果は知っておいた方が良い」とか、逆に「いつか重い病気にかかるという未来が見えてしまったら将来に希望が持てなくなるから結果はききたくない」とか様々な考え方が示され、グループで活発なディスカッションが行われました。まず自分の考えを纏め、他者の意見を聴くことにより物事には多様性があるんだということも学べる有意義な時間でした。

 後半は、新薬の開発に関する具体的なお話でした。講師の南野先生がなぜ創薬に興味を持ったのか?創薬の研究に携わるためにはどんな学部で学ぶ必要があるのか?薬のこととなるとすぐに薬学部が思い浮かぶけれどそれって正しいのか?などなど、生徒たちの進路に直結するようなお話をいただきました。また、南野先生の日常にも話が及び、創薬に繋がる実験結果は0,003%という極めて低い確率の中で日々実験を繰り返しているけれども、この仕事には夢があるんだということについて熱く語っていただきました。

 三丘セミナーは三国丘高校の特長の一つです。ホンモノに触れるところから始まる人生もあります。学校の外から見ていたら進学実績に気を取られてしまい、そこに辿り着いた経過にまで思いが至らないと思いますが、人が本気で動き出すのはホンモノに触れた時です。中学生のみなさんも同じかもしれませんが、苦しい受験勉強はそれを支える強固なモチベーションがあるからこそ頑張り通せるものです。ホンモノに出逢うことで心に火がつくのです。今回の三丘セミナーが、受講した三丘生の背中を押してくれることを期待しています。