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甲斐検事総長、母校で講演! 語るほどに溢れる母校愛に感激!

 1122日(水)、三国丘高校体育館で「甲斐行夫検事総長講演会」が開催され、全校生徒が検事総長のお話に聴き入りました。甲斐検事総長は三国丘高校第30期の卒業で東京大学に進まれ1984年より検事として様々な要職を歴任。昨年624日より最高検察庁検事総長に就任されました。

 私は、玄関前でお出迎えしご挨拶をさせていただきましたが、その瞬間から気さくで飾らないお人柄に惹かれてしまいました。少しの時間校長室で休憩していただき、その後授業の見学や校内のご案内をさせていただきましたが、その間もずっと笑顔でご自身の三丘生時代を懐かしむ様子を拝見し、検事総長の母校愛の深さを実感しました。高校在学中は理化部に所属されていたそうです。

 今回のご講演は三国丘高校130周年記念事業としてお願いしたものです。検察官の仕事の魅力や苦労話、高校時代から今日に至る間に経験された様々なエピソードなど興味深いお話が次から次へと飛び出しました。

 私が特に印象深かったのは、検事という仕事を選ばれた理由です。裁判官でも弁護士でもなく検事を選んだ決め手は"人情味"だったとお話された時に衝撃を受けました。続くお話の中で私が理解したのは、"人情味"と表現されたのは他者(被害者も加害者も)の心情を理解して接することを大事にするあり方だということです。人が人を裁く場面では、まず心情を理解することが必要であり、その上で事実を明らかにして公平に判断することが求められます。"人情味"に魅力を感じられた検事というお仕事は、それだけに極めて難しく同時にとてもやりがいのある仕事なのだと感じました。

 ご講演の後は、校長室で生徒との懇談会が行われました。この機会に先輩である検事総長に質問したいことがあるという生徒14名が大きなテーブルを囲み、本校社会科教員である大塚先生の司会のもとまるで時間を惜しむように検事総長への質問がたくさん出てきました。とても和やかで濃密な時間でした。その中からいくつかを纏めてみましたのでご一読ください。〈質問〉の発言者は生徒、〈回答〉の発言者は検事総長です。

〈質問〉

 今までで一番印象に残っている裁判は何ですか?

〈回答〉

 老人にパラジウムの先物取引をさせるという悪徳商法による詐欺事件。何10億円という金が 動いていた事件です。ところが、被害にあったおばあさんは私に対しては、被害に遭ったことを否定していました。おばあさん曰く「私は騙されていない。彼ら(加害者)がかわいそうだからお金をあげただけ...」「ちょうどその日は母の日だったのに息子も嫁も電話1本かけてこない...そんな時に(犯人から)電話がかかってきたからお金をあげた」。この発言に私は困惑してしまいました。

 どう話せば良いか考えあぐねた末に私が発したのは「もしお金があったら孫がほしいものを買えたかも知れないのにねぇ」という言葉。そうしたら、おばあさんがポツリポツリと経緯を話してくれました。息子らに「欲を出すから被害に遭うんだ」と叱られたこと、自分(おばあさん)としては孫のためにお金を増やそうと思ったのに上手くいかなかったこと......等々。

 おばあさんに「それが詐欺というものですよ」と伝えると納得してくれました。

 この時私が感じたのは、犯罪かどうかという価値判断をするだけでは割り切れないものがあるということ。それが人の気持ち(心情)だということです。とても良い経験をさせてもらったと思っています。

〈質問〉

 高校時代のエピソードを教えてください。

〈回答〉

 自分が三丘生の頃はこんなに自発的に何かに取り組むことはなかったと思います。印象に残っているのは、定期テストの教科毎の点数と総合点上位20人を壁に貼り出していたことです。

 競争心を煽っていたのだと思いますが、2年生の時"貼り出された点数と自分の努力の量は釣り合わない"ということに気づきました。その時に解脱したというか何というか、取った点数よりも理解したかどうかが大事なんじゃないかと思い至った時に世界が変わったのを憶えています。

 この経験から、他人と比べるのではなく自分で判断して行動できるようになったと思っています。

 検事総長は、どの質問にも非常に丁寧にお答えくださいました。この他にもう一つ、これは女性の検事が答えてくれた質問ですが、ご紹介したいと思います。ご覧ください。

〈質問〉

 女性の検事が多くなっていると訊きましたが、実際の男女比や働きやすさは?

〈回答〉

 証拠を詳細に検証するのに必要なのは、考える力、話を聴く力、忍耐力など。これらに男女差はありません。実際に仕事をする上でも男女差を感じることはなく、妊娠・出産・子育て等の環境も整っている職場環境です。男女比は女性がどんどん増えてほぼ半々になったので、今後は女性の方が多くなるかも知れないと思っています。

 性犯罪被害者や子どもから話を聴くときは女性の方が向いていると言われたこともあります。

 最後に、講演会や懇談会の写真を載せておきます。その場の雰囲気が伝われば嬉しいです。

甲斐検事総長のご講演に関することは「三国丘高校同窓会」のホームページにも掲載されています。リンクを貼っておきますので、併せてご覧ください。

検事総長・甲斐行夫さん(高30回)が母校で講演