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〈三丘セミナー〉ホンモノに学ぶ国際協力の過去・現在、そしてこれから

 三丘セミナーの記事を書くのは夏以来ですので、ここでもう一度「三丘セミナー」についてお話しさせてください。公立私立を問わず各高校では所謂「講演会」という催しが開かれていると思います。大きな括りで言うと「三丘セミナー」もその一つですが、まず実施回数が違います。三国丘高校の「三丘セミナー」は年間10回を超えます。もう一つ明らかに違うのは講師です。先端を行く研究者や豊富な経験を誇る実践家など何れもホンモノです。伝統ある取組ですので、多方面との繫がりも強固なものになり、斯界のトップランナーの方々もお越しいただいています。

 そんな中、今回、講師としてお越しいただいたのは、関西学院大学総合政策学部教授の西野桂子先生です。先生は長らくユニセフの職員として国際協力の現場に立っておられました。NGO等の組織との繋がりも深く、フィリピンやバングラディシュなどで現地住民の方々とも身近に接してこられました。

三国丘高校との繫がりも深いんです。SGH立上げの頃からお世話になり、今の三国丘高校SGHの土台を築くために大きなお力をお貸しいただいたのが西野先生です。

 今日のテーマは「国際協力の過去・現在そしてこれから~NGOを中心に~」です。まず最初の話題は通信手段の進化でした。1980年代にバングラディシュで勤務していた先生がニューヨークのユニセフ本部と連絡を取る唯一の方法は"郵便"だったそうです。講演中に先生が受講した生徒たちに発した質問を読者のみなさんにもしてみます。「バングラディシュとニューヨーク、手紙が往復するのにどれくらいの日数を要したでしょう?」......答は1か月だそうです。 それが今では世界各国(勿論バングラディシュでも)携帯電話やパソコンで瞬時に連絡がとれます。衛生状態が良くなって人口が増えたり、識字率が上がったりと良いこともたくさんありますが、依然として解決しない課題もたくさんあるそうです。ここからが「現在」の話です。

 これは、困難な課題の一つに過ぎないのかも知れませんが、世界を見渡せば、女の子が学校に行けないという状況はまだまだたくさんあるそうです。その主な理由として挙げられるのが7点あると言います。「家事労働」「賃金格差」「宗教」「通学時間・通学路」「女性教師の不足」「トイレ」「児童婚」です。「児童婚」というのは聴き慣れない言葉ですが、12歳や13歳の女の子が自分の意志とは関係なく結婚させられるということだそうです。

 様々な問題を解決に向かわせるためには、国際協力パートナーという組織が必要であり、今は、その多様化が進んでいるという話もありました。国や国際機関に加えてNGOや財団、大学や学会、さらには企業までもが国際協力パートナーとなって支援の輪を広げているということでした。これからは、それぞれの組織がその特長を生かして役割を果たしていくことが求められているということを学びました。

 講演の締めくくりは受講した三丘生たちへの質問でした。「SDGsを達成するために、そして誰一人取り残さないようにするために、あなたは何をしますか?」

 スケールの大きな課題について学んできた最後に「あなたは何をしますか?」と問いかけられた時には正直ドキッとしました。こんなに便利で衛生的で、不便さなんて感じない生活を送っている自分たちは何を考えどんな行動を起こせば良いのか...このブログを読んでいただいたあなたはどう思いますか?

 私は、読者のみなさんの中には中学生やその保護者のみなさんもたくさんいらっしゃると思いながら書かせていただいています。高校時代というのは人生の中でもたくさんのことを学ぶ大切な時間です。そんな高校時代にホンモノと出逢うということがどんなに大事なことなのか、私は今日あらためて実感しました。「三丘セミナー」は、我々教員が蓄積したノウハウをもとに、これからも生徒に良い刺激を与えることができるようにしていきたいと思っています。講演の様子を写真でご覧ください。